« ブログ再開 | メイン | パソコンを買い替えました »

高校受験の息子へ

 あなたが生まれた日のことを昨日のことのように覚えています。 小さく生まれて、元気に育ってくれましたね。 初めての子どもで、お父さんもお母さんも戸惑うことも多かったのですが、いろいろな人たちから助けられてきました。あなたのそれぞれの祖父母に、地域の人たちに、保育園や学校の先生方に、またお医者さんにも助けられ、今日まで来ました。本当に、いろいろな人たちに感謝しています。 あなたはもうすぐ義務教育を終えようとしています。努力家で、人を悪く言わない子に育ってくれたことを、嬉しく思います。ありがとう。

高校を目ざすあなたは、いま、大変な時だと思います。時代は違いますが、お父さんも受験勉強というものを経験しているので、自分の経験で考えても、受験生は本当に大変だと思います。

日々せまってくる受験のことで頭が一杯かも知れません。人生そのものが孤独な戦いのように思えているかもしれません。

たしかに、今は戦いの時です。でもそれが一生続くわけではありません。受験勉強というものは期間限定で、しかも、人との戦いというよりは自分自身との戦いです。自分の望みを未来につなぐための戦いと言ってもいいのです。

お父さんは、人生の大部分は、他の人との協力だと思っています。協力し合って自分も相手もより良くなってゆく、そういうものだと思っています。いいですか、人生の大部分は人との協力です! 戦いは、人生の中のある一面でしかありません。しかも自分との戦いです。人生そのものが、周りを敵にして戦う孤独な戦いの連続ではありませんから、どうか、誤解しないで下さいね。

さて、あなたは何のために勉強するのですか? まわりの人たちが勉強しているからですか? 学校から言われるからですか? 将来の収入のためですか? 何のために勉強するのですか? 今は、受験のことで頭が一杯で、「高校に進みたいから勉強する」としか答えようがないかもしれません。でも、高校合格は最終の目的ではありません。高校に行ってからも勉強は続きます。高校に進むのは、次の勉強のためのスタートとも言えます。 そもそも、あなたは何のために勉強するのか、考えてみたことがありますか?

大人たちは、いろいろ理由を言うだろうと思います。 おそらく、すべての人が納得する理由を、一つだけ挙げることは出来ないと思います。 ですから、今から言うことはお父さんの個人的な考えです。先生方がおっしゃることとは少し違うかもしれませんが、こういう考えもあるのだと思って聞いてください。

人生の大部分は他の人との協力だと言いました。人が互いに協力し合うためには、知識も思考力も必要です。ものを知らず、考えずに、相手を理解することは出来ないし、協力し合うことも出来ません。これが、勉強が必要な理由の一つだと思います。

間違った思い込みから解放される、というのもあります。想像してみてください。もし、お腹が痛くなったらどうしますか? 痛みがひどければお医者さんの所にいきますよね。まさか、痛いのは誰かの呪いだとか、祟りだとか、悪魔の仕業だとか、思いませんよね。それは知識があるからです。その背後には、人類の勉強の積み重ねがあるからです。 学びがなければ、闇の中を歩むことになります。勉強することで世界は広がり、間違った思い込みから解放されてゆくのです。 今の話は一つの譬えに過ぎません。実際は様々な間違った思い込みからの解放があるでしょう。世の中にも、あなたにも、この私にも、思い込みはあるでしょう。だから、正しく考えて自由になるために、さらに勉強が必要なのだと思います。

でもそれは、すべての勉強には当てはまらないのではないか、受験勉強は、単に入試のためのもので、実社会ではほとんど役に立たないのではないかって、言われそうですね。 私も、過去には受験生でしたから、そう思う気持ちはよく解ります。たしかに、勉強の中には、そのまま直接は実社会で使わないような分野もあります。しかし、私はこれまで生きてきて思うのですが、中学や高校で勉強したことは、ものごとを考えるときに、筋道をたてて考えてゆくのに役立っています。社会の中で、それをそのまま使うわけでなくとも、ものごとをきちんと考える訓練として役に立っています。

私自身、至らない点はたくさんあるし、それを承知で言うのですが、受験勉強も含めて、すべての勉強は、自分の足元を照らし、周りを照らし、そうやって自由になり、相互に理解し合い、自分も相手もより良くなってゆくための過程であり道具であると考えています。だから、単に知識を詰め込むだけでなく、思考が必要で、哲学も、道徳も必要なんです。

「なぜ勉強しないといけないのか」と思うときは、今の話を思い出してみてください。

自分が目ざす進路に一心に向かって行って下さい。恐れることはありません。勉強は、自分も含むみんなをよりよくするための道なのですから。

あなたの健闘を祈っています。 父より (伊藤一滴)

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。