中古カメラの今
9月も2週目になり、すっかり秋めいてきました。ここ何日か秋晴れの日が続いています。
青々としていた田んぼも、だんだんに黄金色になってきました。生まれて初めての稲刈りが近づいてきて、ちょっと緊張しています。
さて、
仕事で山形市に行ったとき、たまたま通りかかった中古店を何気なくのぞいたら、私も愛用している一眼レフのカメラ「オリンパスOM-1」が6千円。50ミリの純正レンズもストロボシューもついて6千円。
「現状渡し、保証なし」でしたが、お店の人に言って見せてもらいました。
「どうぞ、レンズもボディーもご覧になってください。きれいですよ」と言うので、見てみると、確かにレンズはカビも曇りもなくピカピカで、ミラーの腐食もありません。シャッターを切らせてもらったら、私が耳で聞く限り、使い慣れたOM-1の確かなシャッター音が聞こえます。
めったに衝動買いなどしない私ですが、すぐに車にお金を取りに行き、買ってしまいました。ただ、レンズのキャップがありません。帰りにカメラのキタムラに寄って聞いたら、「お店に新品の在庫がないもので、中古品でもよろしければ」と、百円で売ってもらいました。
デジタルカメラの普及で、フィルムを使う中古カメラは暴落です。
中古のボディーだけで何万円もした「オリンパスOM-1」が、レンズもストロボシューもついて6千円。そりゃあないでしょう、という気持ちです。
フィルムを使うだけでなく、OM-1は完全に手動式ですから、焦点はもちろん絞りもシャッター速度もマニュアル操作です。そういう操作が瞬時にできる人がだんだん少なくなってきた、だから、需要と供給の関係で値が下がっている、というのもあるのでしょう。
オリンパスだけでなく、かつて高嶺の花だったニコンのFシリーズなども、びっくりするくらい安くなっています。
今は、そういう時代なんですね。
人間の側が熟練者になって自分が思うように機械を使いこなしていた時代は過ぎ、今は、生活や仕事のさまざまな面で、電子制御に頼る時代です。しかも、すぐモデルチェンジされるので、慣れた頃には新製品が出回り、習熟するだけ馬鹿をみるような時代です。それはわかっているのですが、それにしても、かつての名機のあまりの値下がりは、ちょっと寂しいです。
でも、考えようによっては、中古の名機の買い時なのかも知れません。
ただし、オーバーホールに出せば数万円かかることもあります。お店によっては整備済の中古品に保証書をつけてくれる場合もありますが、それなりの値段です。「現状渡し」の格安品というのは、動作良好ならもうけもの、整備が必要かもしれないし、その場合、整備にいくらかかるのか、賭けみたいなところがあります。それに、今後もフィルムが確実に生産され続けるのか、それも、わかりません。(伊藤)
余談
高校生の頃、世界史でイギリスのラダイト運動のことを勉強していたとき、「産業革命による時代の変化に対応できなくなった人たちの暴動」で「歴史の進歩に対する逆行」みたいに思ったんですが、今考えると、単なる暴動ではなくて、過去を否定してゆくことへの抵抗だったのかも知れませんね。高校生の私は、産業革命は「歴史の進歩」だと思って何も疑っていなかったのですが、今思うと、本当に進歩だったのか疑問です。むしろ、破綻へ向かう方向に大きく舵を切ったのかもしれないのです。暴力には賛成しませんが、機械による大量生産など否定した方が、むしろ、人間らしい未来へ向かっていけるのではないかと、今は思えるのです。
コメント