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『詩的で超常的な調べ』 あの世の新曲??

はるか昔に世を去った作曲家たちが今もあの世で作曲を続けていて、あの世の新曲をこの世の人間に紹介してくれるなんて、そんなことがあるんだろうか?

「のだめカンタービレ」に影響されて、最近クラシック音楽を聴いている。
そして、前から気になっていたローズマリー・ブラウン著、早川富士男訳『詩的で超常的な調べ』(国書刊行会)を読んでいる。(原題は"Unfinished Symphonies: Voices from the Beyond"(未完の交響曲:あの世からの声)「交響曲」も「声」も複数形)

これは、実に不思議な本だ。


著者ローズマリー・ブラウン(Rosemary Brown 1916 - 2001)は小さいときから霊を感じる能力があったという。彼女はフランツ・リストの霊に導かれ、著名な音楽家たちの霊に次々に会ったのだという。どうも、リストが霊界の音楽家たちのまとめ役のようだ。

リストの他に、ベートーヴェン、ショパン、シューベルト、ブラームス、ドビュッシー、ラフマニノフ・・・といった霊が訪れ、無名の未亡人ローズマリー・ブラウンに新曲を伝えたのだという。

彼女は、以前少しピアノを習った程度で、専門的に音楽を学んだことがなかった。生活は豊かではなく、クラシック音楽を聴く趣味もなく、また、あまりクラシックの知識もなかった。楽譜の書き方さえよくわかっていなかった。
音楽家たちの霊から楽譜の書き方を教えてもらい、彼女は霊たちの新曲を譜面に書き取ったという。
ベートーヴェンの霊の場合だと、ブラウン夫人の手の動きが遅くて待っていられなくなったようで、直接彼女に乗り移って手を動かしたという。それは取材中の放送局の人たちの目の前で起きた。彼女は猛スピードでベートーヴェンの新曲だという楽譜を書いた。相当の熟練者でなければ書けない速さだったという。

あの世の音楽家たちから伝えられたというそれぞれの曲は、専門家が見ても、各作曲家の特徴がみられるという。

当時、音楽家の作風をまねて新曲を作るAIなどなかった。仮に、背後に音楽に詳しいゴーストライターがいたとしても、素人がクラシックの新曲を全部暗記して人前で猛スピードで五線紙に書くのは、無理ではないかと思う。一体どう考えたらいいんだろう。
やはり、本当に霊?


仮定の話だが、もし、本当に霊界があり、霊界の音楽家たちがリストのコーディネートによって出現し、ブラウン夫人に曲を伝えたとするならば、伝えられた曲がその音楽家の最高傑作とは言えないことの説明もつく。霊界の音楽家らは、この世の多くの人たちが理解できる水準の曲で、かつ、ブラウン夫人が筆記可能な曲を伝えたのだ。目的は、自分のあの世での最高傑作を伝えることではなく、「私たちは、死後も作曲してますよ」と伝えることだった。

この役割を現代のプロの音楽家に頼まなかったことの説明もつく。もしプロの音楽家なら、その人がクラシック音楽をまねて作曲したと思われたろう。たとえ猛スピードで楽譜を書いたとしても、誰も不思議に思わなかったろう。


栗原裕一郎氏がこの本の詳しい紹介を書いておられるので、関心のある方はどうぞ。ただし、氏自身は、霊の出現には否定的である。
「リスト、ベートーヴェン……霊界の楽聖たちの作品を代筆!? 音楽霊媒師が書き残した奇書を読む」
https://realsound.jp/2015/03/post-2796.html

(ちなみにこの栗原裕一郎氏は、小学校と中学校で登校拒否、東京都立日比谷高等学校中退、大検から駿台予備校を経て東京大学理科一類除籍(ウィキペディア)というから、なんか、すごい。〇〇卒の肩書なしの論客。)


何と、ローズマリー・ブラウンが霊から伝えられて書き取ったという曲の楽譜まで販売されている。
http://www.kamakura-musica.com/shopdetail/000000002952/

かつて、レコード、CDも出たようだが、現在は絶版で、デッドストック品や中古品はたいへん高価になっている。ネットで見たらCD1枚が数万円。復刻して2~3千円くらいで売ったら、けっこう売れると思うのだが・・・。英語版の解説もつけたら世界的に売れると思うが。
「ローズマリーの霊感~詩的で超常的な調べ」
作曲:ローズマリー・ブラウン、ピアノ演奏:ピーター・ケイティン、ローズマリー・ブラウン(霊の存在や霊との交流は科学的に証明されていないため、ローズマリー・ブラウンが「作曲」者となっている。霊たちは、本当は我々に著作権があるんだから印税を寄こしなさいなんて言わないだろうし。絶対言わないとは思うけど、もし万一言われたら、どうやって霊界に払うんだ?)

「ローズマリー・ブラウンはかなり上手にピアノを弾いている。少しピアノを習った程度だなんて、嘘だ」と言う人もいる。だが、ブラウン夫人によれば、彼女はリストやブラームスらの霊から曲を伝えられると共に、ピアノの指導を受け、指導に従って練習して上達したのだと言う。リストやブラームスらの霊から直接ピアノのレッスンを受けたって?! なんか、それ、うらやましい。


そう言えば、ターミナルケアの先駆者として知られるエリザベス・キューブラー・ロス博士が、霊たちと対話していたという話を思い出した。彼女は自伝などに、大まじめにそのことを書いている。

(伊藤一滴)

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