山里の暮らし3
かつて内村鑑三は「学ぶべきは天然」と言い、自然農法家の福岡正信は「自然は完全なものとして完成している」と言いました。実際、山の中で暮らしながら、天然自然から学ぶことは多いと感じています。
害虫の発生にしても、その土地にふさわしくない作物を自然が除去する自然界のバランスの働きと考えることができます。つまり、農薬で害虫を駆除するより、無農薬でも害虫が発生しにくい作物を選んで栽培した方が自然の秩序に沿った農業だと言えるのです。それがその土地にあった作物なのですから。
自然農法を実践するクリスチャンが言っていました。
「害虫というのはイエス様みたいだ。虫は人の身代わりとなって、人が食べるべきでない作物を代わりに食べてくれる」
その言葉にはっとしたんです。人は作物を食べる虫を害虫と呼ぶけれど、虫たちはその土地にふさわしくない作物を代わりに食べて除去してくれている。その虫を薬で殺して、ふさわしくない作物を食べるのが人間なのか。虫たちは人間の身代わりとなってくれているのに、人間はその意味を悟らず、農薬で虫を殺してまで土地に合わない作物を作って食べている。
出荷用の作物でやむを得ない場合を除き、農薬を使わないことにしました。
やむを得ず使う場合でも、最低限の農薬使用量に抑えることにしました。
家の周りの虫は殺しません。害虫とされる虫も、蚊以外は殺しません。蚊は、しょうがないです。夏は天然除虫菊の蚊取り線香を焚いて、なるべく蚊を追い払うようにして、むやみには殺さないようにしていますけれど。
ネズミの被害には困りました。収穫したコメを荒らされるだけでなく、衣類や革製品や石鹸までかじられました。電話線を噛み切られて、電話が使えなくなったこともありました。電気のコードまで噛まれたら漏電火災の恐れもあります。
猫を飼うことにしました。最初は2匹でした。その後、猫が増えて、最大10匹になってました。
山里に猫を捨てる人がいて、保護していたら増えました、特に数年前、怪我をしてうちの敷地にたどり着いた猫が、「助けてください」というような顔でこっちを見るんです。助けないわけにはいかなくて、傷を消毒してエサをあげたら家に居つくようになって、それがメスで、家で出産して、それで10匹になりました。なんとか飼ってくれる人を探して猫を減らし、今は3匹家にいます(みな不妊、去勢済)。お隣さんが猫好きでエサをあげてくれるんで、猫が共同所有みたいになっちゃいました。
複数の猫たちがいつも家の中や家の付近にいるんで、ネズミ対策の効果は抜群です。
なるべく循環型の暮らしに近づけるよう心がけています。
米や野菜を自給する。
ニワトリを飼って卵や肉を得る。
くず米や米ぬかなどをニワトリにやる。
日々の食事の食べ残しを減らす。
魚のアラなどは猫にやり、野菜くずなどはニワトリにやる。エサにならない部分は肥料にする。
ニワトリのフンは、畑の隅に運んで草や籾殻(もみがら)と混ぜて、数年寝かしてこれも肥料にする。
最終的には肥料ですから、生ごみがゼロになりました。
そうやって、ゴミが減り、肥料の購入も減りました。
続く
(伊藤一滴)
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