茨城一家殺傷事件 「犯人は家族」「犯人は外国人」と書いた人たちはどう責任を取るのか
今月7日、2019年9月に起きた茨城の一家殺傷事件の容疑者が逮捕されました。
この事件についてフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用します。 2021.5.10 閲覧
引用開始
事件発生
被害者一家は男性A(当時48歳)とその妻B(同50歳)、大学3年生の長女C(当時21歳)、中学1年生の長男D(当時13歳)、小学6年生の次女E(当時11歳)の5人家族だった。
2019年9月23日0時40分ごろ、本事件の被害者一家の母親Bから「助けて」という通報があり、15分後に境警察署員が現場に駆けつけると犯人であるOの姿はなく、一家の父親Aと母親Bが遺体で発見された。就寝中に襲われた2人は顔や首などを約10箇所以上刺されており肺に達するほどの傷もあった。2階の子ども部屋で寝ていた夫婦の長男Dは腕などを切られ重傷を負わされ、次女Eは催涙スプレーのようなものを噴射されて軽傷を負った。1階の自室にいた長女Cは無傷であった。茨城県警察は本事件を殺人事件と断定し、境署に捜査本部を設置して捜査していた。
金品を物色した形跡はなく、周囲を木々に囲まれ、一見住宅があるようには見えない被害者宅の立地から当初、捜査本部は、金銭目的より一家に強い恨みを持ち、周辺現場に土地勘がある犯人像を有力視し、夫婦の人間関係を調べていた。しかし事件から2か月が経過しても夫婦のトラブルの情報はなく、捜査は難航していた。重軽傷を負った長男Dと次女Eは「帽子とマスクの男に襲われた。犯人は1人だった」と証言し、近隣住民からも「事件前にマスクをした不審者を被害者宅で見た」という目撃証言が寄せられてはいたが、犯人特定の決め手とはならなかった。地元の防犯協会などが100万円の懸賞金を出し、事件発生から1年を前に情報提供を呼びかけるポスターなど作成し、公開したが結局犯人逮捕までに1年8か月を要した。
逮捕
2021年(令和3年)5月7日、埼玉県三郷市に住む26歳のOが本事件の被疑者として、夫妻への殺人容疑で茨城県警に逮捕された。
引用終了(注は省略)
事件当時の産経新聞電子版 2019.10.2 11:29 より引用します。
引用開始
茨城県境町の住宅で家族4人が刃物で襲われ殺傷された事件で、別の部屋にいて無事だった長女(21)が県警に対し、「言い争う声のようなものを聞いたが、怖くて部屋から出られなかった」という趣旨の話をしていることが2日、捜査関係者への取材で分かった。県警は事件当時の詳しい状況を調べている。
長女はさらに、言い争う声は「けんかか何かだと思った」という内容の証言もしているという。
事件では会社員のAさん(48)と妻のBさん(50)が死亡。別の部屋で寝ていた中学1年の長男(13)と小学6年の次女(11)も重軽傷を負った。
事件をめぐっては、Bさんが110番通報をした際に「何者かが侵入してきた」と話していたことも捜査関係者への取材で判明。これまでに負傷した家族は「マスクの男に襲われた」と話しており、県警は犯人が妻と面識のない男だった可能性が高いとみている。
引用終了(AさんとBさんの名は原文では実名)
毎度のことですが、こうした凶悪事件が起きると、「犯人は家族の〇〇に違いない(または、家族の○○が疑われる)」だの「犯人は外国人」だのと、ネットに垂れ流す人たちが必ずいます。
その時点で警察も突き止めていない犯人がどうして分かるのか不思議です。天才的名探偵にでもなったつもりなのか、それとも透視能力でもあるのか?
筋の通らない話を頭の中で勝手に作るだけでなく、勝手に作った見当違いの「推理」をネットに流すのは、ひじょうに迷惑です。
突然両親を殺害された子どもたちは、どれほどショックを受け、どれほど悲しみ、苦しんだことでしょうか。それに追い打ちをかけるような犯人呼ばわりの「推理」です。
「犯人は家族に違いない」などど言っていた人たちは、どう責任を取るのですか?
「そのときはそう思ったんだから仕方ない」とか、「あの時点の情報から推理すればその可能性もあった」とか、「言論は自由だ」とか言って、開き直るのですか?
「犯人は家族」というのは、当時の情報でもあり得ない話でした。
当時の報道でも「これまでに負傷した家族は「マスクの男に襲われた」と話しており、県警は犯人が妻と面識のない男だった可能性が高いとみている」とあります。長女か、長男か、次女に、母親にもきょうだいにも気づかれない変装能力があったと言うのですか。しかも長男は重傷を負い、次女も負傷しています。
1階にいて無傷だった長女が特に犯人呼ばわりされたのですが、これもあり得ない話です。
母親の通報から約15分後に警察官が現場に到着しています(約10分という報道もありました)。
そんなわずかな時間に、返り血を消したり血のついた衣服を警察に気づかれないように処分したりできるはずがありません。水で洗ったくらいでは血液反応は消えないのです。不自然どころか、理屈として成り立ちません。「言い争う声のようなものを聞いたが、怖くて部屋から出られなかった」という話の方が筋が通っています。
「犯人は外国人」というのも根拠のない話です。実際、そのような主張をする人たちは明白な理由を挙げません。「これまでも外国人による犯罪があったから今回もそうだろう」とか「日本人ならこんな残酷なことはしないだろうから犯人は外国人に違いない」とか、まるで理由になっていません。それは、「これまでも日本人による犯罪があったから今回もそうだろう」とか「日本人でなければこんな残酷なことはしないだろうから犯人は日本人に違いない」と言うのと同レベルの話です。
確たる証拠もなく、しかも理論として成り立たない「推理」をネットに流して、被害者や被害者家族や外国人を侮辱する人たちを処罰することはできないのでしょうか?
成り立たない主張をして人を侮辱するのも「言論」なのですか?
言論の自由とは、成り立たない主張で人を侮辱する自由を含むのですか?
「犯人は家族」とか「犯人は外国人」とか書いた人たちからの反省の弁がまったく聞こえてきません。
こうした人たちは何の反省もなく、謝罪もなく、また凶悪事件が起きればまた同様の事を書くのでしょうか?
(伊藤一滴)
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