創作 あるクリスチャンの告白 るっせえな(自称「福音派」編)
小さいときから「福音派」の教会に通っていました
高校に入って間もなくバプテスマ(洗礼)を受けました
両親が「福音派」でしたから
教えられたことを何も疑わずに育ちました
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聖書66巻だけが神の霊感によって書かれた誤りのない神の御言葉であり、真理を示す唯一の完全な規範です。私たちは聖書66巻以外の外典や聖伝、他宗教の教え、その他の一切を排除します。
イエス・キリストは、世の罪びとを救うために処女マリヤから生まれ、真の神でありながら人としてこの地上を生きて、私たちの罪の身代わりとなって十字架にかかり、罪の贖いを成し遂げられたのです。
陰府にくだり、三日目に復活し、天に昇り、父なる神の右に座し、やがて生者と死者を審くために再臨されます。
父なる神、イエス・キリスト、聖霊は、三位一体であり、これを認めないのは異端です。
人は、父なる神によって、神の似姿として創造されました。しかし、最初の人アダムとエバは誘惑に負けて禁断の実を食べ、神に背く者となって楽園を追われ、死ぬ定めとなったのです。アダムとエバの子孫である我々はみな罪びとです。それにも関わらず、神は世の人々を愛し、そのひとり子をお与えになり、イエス・キリストの十字架の贖いによる救いの道を開いてくださったのです。
悔い改めてキリストを信じる者だけが、罪を赦され、神の子とされ、永遠の命を得るのです。これを認めない異教徒や異端者や無神論者はすべて地獄の火で永遠に焼かれます。その人の良心、ヒューマニズム、善行などは一切関係ありません。ただキリストを信じる以外、他に救いの道はありません。福音を知らなかった人も、知らなかったからといって赦されることはなく、みな地獄に行きます。だから地の果てまで伝道しなければならないのです。また、「キリストを信じる」と言ってはいても、正しい信仰を持たないリベラル派やカトリック教徒も審かれることでしょう。サタンのわなは巧妙で、福音派の中にさえ、リベラル派やカトリックの悪影響を受けて正しい聖書信仰からそれてしまった人たちがいます。この世はサタンの支配下にあり、サタンは巧妙に人を惑わします。進化論を教える教育や、聖書の中に歴史的事実ではない記述があるとする主張、同性婚を認める主張など、みな神の教えに反するサタンのわなです。常に警戒しなければなりません。
正しい教会は、聖書66巻だけを信じる聖書信仰に立つ福音主義の教会だけです。聖書に書いてあることは、みな真理であって、歴史的にも科学的にも正しいのです。神話的な世界観の中に生きていた古代人の表現であると言った主張は異端者の考えです。自由主義神学の悪影響を受けたリベラルやカトリックに騙されてはいけません。
日曜は主の日ですから、正しい教会で正しく礼拝を守るのは義務です。「炎のランナー」を見ましたか? 世界的な陸上選手が信仰ゆえに日曜日に行われるオリンピック予選を欠席したのです。そうやって彼は主日を守りました。主日礼拝は信者の義務です。
バプテスマを受け、収入の10分の1を教会に捧げ、弟子訓練を受け、正しい福音を正しく伝え、聖餐にあずかり、主の再臨を待ち望むのです。
世の終わりは近いのです。携挙のときが来ます。そのとき地上にいる真のクリスチャンは、空中に挙げられ、再臨のキリストにお会いします。イエス様は地上に再臨され、すべての死者は復活して審判にあうのです。異教徒や異端者や無神論者はすべて地獄の火に投げ込まれ、そこで永遠に焼かれます。どんな良心的な人でも、正しいクリスチャン以外はみな地獄行きです。正しく聖書を読むなら、未信者は決して救われません。
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本気で信じてました
親や教会から教えられてきたことを
それが百パーセント嘘だったら
こっちも気づいたのかもしれませんが
一般のキリスト教会の教義や
かつての教会で言われていたいたことを
うまく混ぜた教えだったのです
あなたがたは聖書の言葉と歴史的な教会の教義を
つまみ食いのように引用して
イエス様の教えとは似ても似つかぬ教えを作っていたのです
それは人間が 聖書を利用して 独自に作った教えです
愛の心などありません
仏教徒の善意も
イスラム教徒の善意も
無神論者のヒューマニズムも
救いとは無縁であると 切り捨て
否定する教えです
人を完全に支配してしまう 恐ろしい教えの中に
私はいました
「あなたは罪びとです」
「イエス様を信じなければ地獄に行きます」
そういった言葉が
絶えず私を支配していました
真剣に信じ
教えに忠実であろうとして
苦しみました
今ならわかります
それは 人が作った教えで
「正しい聖書信仰」という名の偶像崇拝だったのです
あなたがたはいったい何の権限で
正しく聖書を解釈できるのですか
なぜ正しい聖書信仰の「福音派」が
他の「福音派」と対立するのですか
対立する主張が
どちらも正しいのですか
なぜ自分たちの重大な不祥事を
サタンのわなだと言うのですか
なぜ勇気を出して訴えた被害者を
狂言だと言って罵るのですか
私は気づきました
気づくまで いばらの道でした
一時は混乱し
おかしくなってしまいました
今まで信じていたことが
一気に崩れていったのです
あなた方から教えられたことを
余白にびっしり書きこんだ聖書は
開こうとすると気分が悪くなり
体が震え
見たくもなくなって
ごみに捨てました
苦しみぬいたあげく
私は立ち直りました
別の訳の新しい聖書を買って
リベラルな教会に改宗し
エキュメニズムに加わりました
今 幸せに生きています
もう地獄の恐怖におびえることもありません
そんな私を
「サタンのわなに落ちた」とか
「背教者」とか言うのですか
イエス様の教えは
恐怖心で人を縛る教えではありません
人を縛って がんじがらめにする教えではないのです
だのに あなた方は あべこべのことを教えました
あなた方は信者を 罪の意識と地獄の恐怖で脅し
支配し コントロールしていました
私はあなた方から教えられた逆の教えで苦しんだのです
まったく逆でした
イエス様の教えは
苦しみにある人に手を差しのべ
苦しみから解放する教えだったのです
人と人とが 互いに 愛し愛され
共に向上していく教えだったのです
汚い言葉は使いたくないのですが
あなた方から言われたことを思い出すたび
私は心の中で
「るっせえ、るっせえ、るっせえな」
と叫んでしまいます
あなた方が憎いのではなく
早く目を覚ましてほしいのです
今、私は、神様から与えられた重大な使命を感じています
それは 目を閉ざしているあなた方に
目を開いてもらうことです
あなた方は真面目だから
真面目に道を求める中で
恐ろしい教えに引っ張られてしまったのでしょう
そこから抜け出すための
手助けをしたいのです
それが私にとっての福音伝道です
私の使命 負うべき重荷 なすべき務めだと思っています
私は裏切り者ですか
サタンの手下ですか
いいえ
あなた方がどんなに目を閉ざそうとも
イエス様はあなた方を愛しておられます
あなた方に目を開いてほしいのです
あなた方も
こっちに来て
楽になればいいのに
真面目なあなた方は
きっと
すばらしい人になれるでしょう
栄光は父と子と聖霊に
初めからそうであったように
今も 後も 代々に
アーメン
(伊藤一滴)
追記:これは創作です。架空の、あるクリスチャンの告白という形の創作です。
ただし、私がこれまで直接聞いた話や読んだ話などをもとにしています。創作と言っても、私が頭の中ででっち上げた話ではありません。
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