旅立つ息子へ
第一志望の高校合格おめでとう。本当におめでとう。 よくがんばりましたね。 お父さんもお母さんもあなたの希望を尊重してきました。 あなたが自分で決めたとおり、4月から家を離れ、遠くの高校で寮生活が始まります。 お母さんは、ちょっと寂しいようです。 お父さんは、自分の旅立ちのときのことを思い出していました。お父さんは高校を卒業後に家を出て、仙台市内の予備校の寮に入ったんです。1983年の春でした。不安でしたよ。でもね、新しいことを始める期待もありました。お父さんはB高校の出身で、当時は学力が低いと見られていた高校でした。あの頃B高校から大学に進学する生徒は少なくて、授業も受験対応になっていなくて大変でした。それでもお父さんは自分の未来に船出したんです。一浪して大学に進み、大学4年のときにあなたのお母さんに出逢いました。志望大学に落ちたときは悔しかったけれど、結果、素敵な出逢いがあったのです。人生って、塞翁が馬です。 あなたはお父さんの旅立ちのときより3つ若いけれど、今までのあなたを見ているから、あまり心配はしてません。 お父さんは今までうるさいことは言いませんでした。「勉強しろ」とも言いませんでした。ただ「紳士的であれ」とだけ言ってきました。紳士的とは、ずるいことをしない、自分の利益ための嘘はつかない、言動に責任を持つ、礼儀正しくふるまう、相手の立場を尊重する、特に弱い立場の人に配慮する、その他いろいろ、人はこうあるべきだということが含まれるのです。
旅立つあなたに歌を贈りましょう。お父さんが大好きな歌で、古い英語の讃美歌です。
♪ I would be true, for there are those who trust me; I would be pure, for there are those who care; I would be strong, for there is much to suffer; I would be brave, for there is much to dare; I would be brave, for there is much to dare.
I would be friend of all - the foe, the friendless; I would be giving, and forget the gift; I would be humble, for I know my weakness; I would look up, and laugh, and love and lift. I would look up, and laugh, and love and lift.
(私訳) 真実な人になれたらいい、私を信頼してくれる人たちがいるから。 純粋な人になれたらいい、私のことを気にかけてくれる人たちがいるから。 強い人になれたらいい、苦しいことがたくさんあるから。 勇敢な人になれたらいい、勇気を出してすべきことがたくさんあるから。 勇敢な人になれたらいい、勇気を出してすべきことがたくさんあるから。
すべての人の友になれたらいい、敵対する人たちの友に、友だちがいない人たちの友に。 人に差し上げ、贈り物のことなど忘れてしまう人になれたらいい。 つつましい人になれたらいい、自分の弱さを知っているから。 上を見上げ、笑い、愛し、向上してゆく人になれたらいい。 上を見上げ、笑い、愛し、向上してゆく人になれたらいい。
お父さんはこの歌のとおりに生きているわけではないけれど、この歌が掲げている理想が好きです。こういう理想に近づきたいと思っています。宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」も大好きですが、この歌も大好きなんです。
近くにお父さんやお母さんがいなくとも、学校の仲間や先生とよく話をし、自分で考えて判断してください。時々は家に手紙も書いてください。 あなたは、あなたの道を歩むのです。 あなたにふさわしい道が開かれるよう、祈っています。 父より
(伊藤一滴)
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