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税についての作文

税についての作文・未来が悲鳴をあげている
 山形県架空中学校某年  伊藤 某  

 ぼくは「税についての作文」という課題が出るまで、税金のことなんて考えたこともなかった。父にその話をしたら、
「その作文は中学生には難しいテーマだな。お父さんだってあんまり考えたことがない。」
と言いながらも、資料を貸してくれた。
 父から借りた資料と学校で配られた資料を見て驚いた。
 平成25年度の国の財政を見ると、一般会計歳出92.6兆円のうち、税収と税外収入を合わせた収入は47.1兆円。つまり、約半分が借金だ。しかも、たまたま平成25年度だけそうなったのではなくて、こんな状態が当たり前のようにずっと続いている。これが会社なら倒産、個人なら自己破産だろう。
 また、西暦2000年に3.6人でお年寄り1人を支えていたのが、2050年には1.2人で1人を支えることになるという。ほとんど、1人が1人を支えるのに近い。それで支えきれるのだろうか。
 日本は破綻するかもしれない! どうしてみんなあせらないのだろう。大騒ぎしないのだろう。みんなで知恵を出し合って対策を考えないのだろう。
 未来が悲鳴をあげている!
 父に言ったら、
「どうした、驚いたのか。そもそも破綻に向かっている国が中高生に税についての作文を書かせること自体、とんだ茶番劇だな。『みんなできちんと税金を納めて国の財政破綻を防ぎましょう』みたいな、税務関係のお偉いさんたちを喜ばせる太鼓持ち作文を書いたってしょうがない。今の日本の財政は、きちんと税金を納めれば破綻を防げるといったレベルじゃない。どうすれば破綻を防げるのかを議論する段階はとっくに過ぎている。破綻後をどう生きるかを考える時だ。」
と、吐き捨てるように言った。
「どうすればいいの?」
とぼくは聞いた。
父は答えて言った。
「仮に消費税を25パーセントまで上げたって破綻を防げるかどうかは厳しい。国の支出が収入の約2倍なんだから、支出を半分にするか収入を倍にするか、どちらかをしないといけないのは子どもだって分かる。もし政治家が『公的支出を半分にします』とか『すべての税金を2倍にします』とか言ったらどうなると思う。その人は次の選挙で当選するだろうか。」
「当選しない。」
「その通り。国民は目先の損得だけを考えて政治家を選んでいる。今後の国の破綻を防ぐという未来の選択をしない。それが民主主義の限界だ。上杉鷹山のような財政改革は江戸時代だからできたことで、民主主義の社会では難しい。」
 ぼくは、「消費税が値上げされたら大変だけれど、安定した税収のためには仕方がない」くらいに考えていた。でも、そんな甘いものではないようだ。
 過去の人たちや今の人たちのつけが、未来を生きるぼくたちにまわってくる。しかもぼくたちには未来を誰に委ねるかを選ぶ選挙権もない。これはひどいと思う。
 やはり、未来が悲鳴をあげている!

(注:これは中学生の息子に出された作文のテーマに触発されて書いた戯作です。実際の中学生の作文とは違います。当然ですが、息子は上記のような内容の作文は書いておりません。念のため。)
(伊藤一滴)

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伊藤一滴本人です。パソコンの不調により、しばらくの間ブログの更新をお休みします。ごめんなさい。
書きたいことはたくさんあります。しばらくお待ちください。

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