« ご無沙汰しています | メイン | 日本木造住宅史概説(授業より) »

『人は死なない』

矢作直樹著『人は死なない・ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索』[バジリコ]を読みました。
あんまり疲れて、こんな本が読みたくなったのかもしれません。
著者の肩書きは長いです。「東京大学大学院医学系研究科・医学部救急医学分野教授、医学部附属病院救急部・集中治療部部長」だそうです。
次のような内容です。

第一章 生と死の交差点で    
第二章 神は在るか
第三章 非日常的な現象
第四章 「霊」について研究した人々
第五章 人は死なない

それほど驚くようなことは書かれていません。
類似した話はこれまでも聞いてきました。

しかし、同じことを言うにしても、誰が言うかで、一般社会に対する説得力・影響力が違ってくる、というのはあるでしょう。

「肩書き」がその人の全てを語るわけではないし、肩書きと実力が必ず正比例するわけでもありません。それはわかっていますが、この著者の場合、救急救命の実力もお持ちのようですし、なにより、読んでいて、著者の誠実な人柄を感じました。
地位や金銭を求めたいなら、この方の場合、「霊」のことなど語らないほうがいいのでしょうが、上記の肩書きを持つ臨床医が、霊の存在、摂理(一般に神と呼ばれるようなもの)の存在を確信し、霊の不死という意味で「人は死なない」と断じ、公言するのです。かなりの覚悟と勇気で出した本だろうと思います。

念のため言いますが、特定の宗教の立場の本ではありません。
宗教に関して、やや不正確な記述もありますが、宗教史や宗教思想史の本ではないし、この本の論旨にかかわるような点ではないので、たいした問題ではありません。
一部に医学的な説明も出てきますが、私が読んでも分からないので読み飛ばしました。

「神」や「霊」が存在するか否かは、人間の客観的な認識の範囲での科学的判断にはなじまないだろうと思います。
ただ、この世にあるもの、起きている事柄を種々見たり聞いたりして、全体的に考えてみると、神や霊を頭から否定してかからないほうが物事を説明しやすいのではないか、と思えます。
私自身は、高度な神学理論より、人の心の素朴な思いに魅力を感じています。

「神」や「霊」について語ると、何か怪しい新宗教ではないか、カルトではないかと疑われることがあり、迷惑な話ですが、実際、怪しい新宗教もあり、高学歴の人、知的な人でも巧みに組み込まれてゆくことがあります。
誠実に摂理や霊性について考えているのか、偽物か、そのあたりを、きちんと見分けていかないといけないのでしょう。

(誠実な人は金銭問題や異性問題を起こさないし、法外な金を要求しないし、マインドコントロールに近いことをしないし、「神」や「霊」の話で恐怖心を煽ったり人を恫喝したりしないのです。)

(伊藤一滴)

コメント

興味深い本ですね。ぜひ読んでみたいと思います。
私はヒルティを愛読してきたので、少しキリスト教に偏っているかもしれませんが、「人が考えた」科学的認知だけでは及ばない領域があることを、子供のころは感覚的に分かっていたと思いませんか?
神様がみてる、という表現ほど、畏れ多く、また励まされもする言葉はないと思います。
人生の必要な時に、それにふさわしい出会いと別れがあり、それはけっして偶然の産物ではなく、人知の及ばない力がはたらいているとしか思えないことって、数えきれないくらいありますよね・・・
でもこの思いを人に伝えるのは難しい。
「実感」した人にしかわからない感覚なのかもしれません・・・

私も子どもの頃から、何か、人智を超えた働きを感じることがあり、今もそれを否定できずにいます。これまでの自分を振り返ると、偶然だけでは説明がつかないような体験が何度かありました。そうした「導き」というか、「摂理」のようなものを神と呼ぶか、仏と呼ぶか、他の名前で呼ぶか、あるいはどこまでも偶然だと考えようとするか、人それぞれでしょうけれど。
「霊」とされるものについても、実は私はよく解らないのですが、死ねば全て消滅するのだろうか、生きた人間の精神の働きをすべて脳内の物質の働きとして説明できるのだろうか、と、素人なりに思っています。
(一滴)

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。