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新米はおいしいのですが

自分で栽培した米をやっと少し精米し、新米をいただきました。おいしいです。
モミのままで保管してある分もだいぶあるので、モミ摺り後の厳密な重量を出せないのですが、約12俵かそれ以上になりそうです(1俵は60kg、12俵で720kg)。豊作です。
田んぼを使わせてもらった謝礼のお米(俗に言う「年貢米」)、私の父母と妻の父母に贈る分などを引いても、自家用の飯米は自給可能です。

新米は、香り、味、適度な粘り、歯ごたえ、どれをとっても絶品です。
手前味噌かもしれませんが、今まで食べたどんな米よりおいしいような気がします。
地主の真壁さんや近所の農家の人たちからいろいろ協力していただいたこと、妻に手伝ってもらいながら作業したことなど、思い出しながら食べました。
山間部の水田は、作業効率は悪くとも、水も土も質がよく、おいしいお米が採れるようです。
機械乾燥でさえこんなにおいしいのですから、天日干しにしたらどんなにおいしいか、ぜひやってみたいものです。

真壁さんは今年80歳。奥さんと2人暮らしの高齢世帯です。
去年まで稲作もりんご農園も続けてきたのですが、足を傷めて稲作をやめ、それでも、りんごだけは続けてきました。足に障害が残り、歩くのが困難で、りんご園を続けるのも難しくなったと本人は言います。子どもたちはそれぞれ独立して遠くで暮らし、後を継ぐ人もいません。こうしたケースは、地方の農村では、かなり多いのではないかと思います。
「伊藤さん、りんご、やってみないか」
と真壁さんはおっしゃるのですが、私は、今のところ、果樹をやるつもりはないです。
りんごなどの果樹は、農薬使用を当然の前提に短い年月で品種改良されてきたので、無農薬・低農薬での栽培が非常に難しいらしいです。「無農薬で育つ果樹は梅と柿ぐらいだ」と言われています。

農作業小屋の機械を借りてモミを摺り、終わってから小屋の掃除をしました。真壁さんは、1つ1つの農機具について、私に説明してくれました。
「来年は、おれ、もう出来ないかもしれないから。そのときは、伊藤さん、使ってくれ」
私は返事に困りました。親戚でも何でもなくて、たまたま田んぼの一部を使わせてもらっただけなのに。
戦前からずっと続いてきた農家が、廃業を覚悟する場に立ち会うことになってしまいました。

「地主さんが引退するときに、一式ゆずってもらえばいいんだよ」と言う人もいますが、生きてきた証としての農地や農具、農業に対する思いがあるわけで、人を利用してタダ乗りするようなことはしたくないです。
新米はおいしいのですが、私の気持ちは複雑です。(伊藤)

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