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F1作物

ご無沙汰しています。地方の景気も回復傾向にあるようで、私のような小さな建築屋もけっこう忙しくなってきました。6月からは一般住宅にも火災報知器が義務づけられ、換気システムの義務と共に、まためんどうが増えました。火災報知器なんて、つけたければ自分でつければいいのであって、法律で強制すべきことなのか、かなり疑問です。我が家など、囲炉裏をどんどん焚いたら火災報知器が作動するんじゃないか、それもちょっと心配です。

雨が降り、気温も上がると、作物も育ちますが雑草もよく育ちます。最近、ハイハイがうまくなった娘が夜中におきて這い回るので私も目を覚ましてしまい、朝起きられなくなって、何日か草刈りせずにいました。そしたら草ぼうぼうです。この時期の草は凄い勢いです。

さて、今日も畑に関係する話です。
一般にはあまり知られていませんが、スーパーに並ぶ野菜の多くがF1になりました。F1というのは、1代限りの交配種のことです。F1だからといって別に有害だというわけではありませんが、ふだん食べる野菜まで、「1代限り」が多くなり、持続する循環の環から離れました。
馬とロバの交配種をラバと言いますが、ラバからラバが生まれることはありませんから、1代限りの動物です。作物のF1も、イメージとしてはラバに似ています。違うのは、F1でもタネが出来て、蒔けば芽が出ることです。ただし、性質の違う雑種になり、同じ作物にはなりません。
お米はF1ではないので、ササニシキのタネをとって次の年に植えればまたササニシキが実りますし、コシヒカリならコシヒカリ、はえぬきならはえぬきが実ります。でも、F1の作物はそうならないのです。
例として仮の名前で書きますが、スーパーで買った「トマトA」からタネをとり、もしうまく発芽しても「トマトA」にはなりません。「トマトA」の母は「トマト甲」で、父は「トマト乙」、両者の交配でしか「トマトA」はできません(作物の交配では、めしべの側を母と言い、花粉の側を父と言います)。そうなると、単にタネをとる目的で「トマト甲」と「トマト乙」を別々に栽培し続けないといけなくなり、事実上、自家採種は不可能です。農家は、もう、種子会社のタネを買うしかありません。かつて家で、地域で、タネが受け継がれてきたような、循環の環から離れたのです。
なんでF1みたいな、めんどうなことをするのかというと、味、食感、外観、耐病性、栽培のしやすさ、その他いろいろを最良にするためなんだそうです。最良かどうか、私はちょっと疑問ですが・・・・・。

農家向けの種子のカタログを見てみたら、ナス、トマト、人参、ほうれん草、白菜、大根、かぼちゃ、とうもろこし、大豆、スイカ、等々、ことごとくF1でした。F1であること自体、直接人体に害はないのでしょうが、それでいいんでしょうか? 理屈どうこうより、直感的にやばい気がします。
もし大手の種子メーカーに何かあれば、たちまち翌年の野菜は極端に不足することでしょう。それに、そもそも自然の受粉ではふつうに出来ない作物を摂り続けるって、なんか、自然に反する気がしてしかたないのです。

だいぶ前に地元の農協の職員さんから聞いた話ですが、ためしにF1の大豆を完熟させてタネをとり、次の年に蒔いて2代目のタネをとり、3代目、4代目とやってみたんだそうです。「何年もやってみたら、少し色が違ってきたけれど、味は悪くなかったよ」と言っていました。
私もやってみていますが、3代目くらいでも、たいして色は違いません。F1のタネを買い続け、微妙な色まで統一する必要があるのか疑問です。
味は、主観もあるかも知れませんが、市販のF1大豆より私が植えた子孫の大豆の方がおいしく感じます。農薬や化学肥料を一切使っていないこともあり、当然と言えば当然ですけれど。

F1は交配種で、遺伝子組み換えのようなものではありません。タネをとって植えれば、自然の力で先祖がえりしてゆく可能性もあります。家庭菜園のレベルであれば、そこからまた持続していくことも考えられます。
一方、産業としての農業は、メーカーのタネを買い、マニュアル通りに農薬を散布して栽培するしかありません。そっちは、規格化の世界です。そして、そっちの方がスーパーで売られている主流の野菜です。(伊藤)

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