馬の背
育児を経験された方や小さな子どもが身近におられる方はよくおわかりだと思いますが、乳児や幼児のいる日常というのは、次から次にいろんなことがふりかかってきて、掃っても掃っても、次々にふりかかってくるような日々の連続です。
わが家も、てんやわんやですけれど、それでも、時間がゆっくり流れるような山里に暮らし、昔の育児を経験している高齢者たちが温かくみまもってくれる中にいるので、まだ恵まれていると思います。
都市部の景気回復が言われる中で、地方はあいかわらずのどん底状態。特に建築・土木系は全然ダメで、数字だけ見ると、都市に住む人のほうがうんと得しているように見えますが、いつも言うように、住みやすさや幸福感などは数字だけでは計れません。
表題の「馬の背」というのは、雪道の状態のことです。降雪量が多かった時期、公道から家までカンジキで歩くと、歩いた所だけへこみ、凹の字の形になりました。毎日歩いているので、凹のへこんでいる部分は雪が踏み固められ、とても固くなり、だんだん春めいてくるとまわりが先にとけて、一番くぼんでいた部分がでっぱりになって残るのです。それで今度は凸の字の形になるのです。これが、馬の背です。高齢者から教えられ、はじめてそういう言葉を知りました。
文字どおり馬の背中みたいな形で、歩きにくくて仕方ないので、スコップでならそうとしたのですが、やたら固くて難儀しました。雪道に馬の背ができるのは、春が近い証拠だそうです。
「昔は唐鍬(とうぐわ)でならしたもんだよ」と聞きました。ピンとこない人が多いかと思いますが、唐鍬というのは固い土を起こすのに使う肉厚の重いクワです。そういうクワで、背の固い部分を砕いて平らにしたんだと思います。うちにも唐鍬はありますが、物置小屋に入れたまま大雪になり、小屋全体が雪に埋まって取りに行けなくなってしまいました。
土手の日当たりのいい部分に少し土が見えてきて、福寿草が咲いていました。
三寒四温と言いますが、少し寒い日があっても、日差しはすっかり春めいています。
豪雪地帯にいると、本当に、春が来るのが待ち遠しいです。(伊藤)
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