るっせえな(優等生編)
ちっちゃな頃から優等生
15で成績学年トップ
親にも教師にも友だちにも気に入られたくて
いつも周りを気にしてました
県内トップの高校で
私はいつも優等生 生徒会長になりました
君の成績なら 医者にも弁護士にも大学教授にもなれるよって
期待されてる生徒でした
でも私は絵を描きたかった 美術を学びたかった
だから正直にそう言ったら
何を馬鹿なことを言うんだって
親からうんと叱られました
絵描きじゃ食べていけないよ
成績がいいのに もったいない
絵を描くのは趣味の範囲にして
名門大学を目ざしなさい
それでも私はとことん絵を描きたかった 美術を学びたかった
それが本当の自分だと思ったのに
親は許さない ちっともわかってくれない
自分て何? 親の望み通りに動くあやつり人形?
もう いい子に疲れました
親は「あなたのため」って言うけれど
それって私のためじゃなくて
ただの親の見栄じゃない
いつも周りを気にしてばかり
人に喜んでもらえるように
先回りしていい子を演じる自分に
本当に本当に疲れました
恋した人はいないけど 家を出ようと決めました
駅のホームで見つかって 力まかせに窓を割り
砕けたガラスの上に寝転がり
背中が傷だらけになりました
血まみれのまま暴れたら 駅員たちにおさえられ
父母の泣いている声と一緒に
救急車とパトカーの両方のサイレンが
近づいてくるのが聞こえました
るっせえ、るっせえ、るっせえな
あわれな野郎 臭え口ふさげ
あれから10年経ちました
親元を離れてアパート暮らし
今、塾講師のバイトと兼業で
近所の子どもたちに絵を教えています
自分の絵はたまにしか売れませんが
それで 十分に幸せです
だのに 10年前を思い出すと
今でも怒りが込み上げます
何が「あなたのため」だ!
自分たちが出来なかったことを代わりに私にさせて
見栄を張ろうとしてただけじゃないか
どうしてわかんないだよー!
「あなたのため、あなたのため」って勉強ばかりさせられた私の幼少時代と青春を返してよー!
るっせえ、るっせえ、るっせえな
あわれな野郎 臭え口ふさげ
・・・・・・・
創作です。
もちろん創作。
私(一滴)はそんな優等生じゃありません。駅のガラスを割ったりもしてませんし、割れたガラスの上に寝たこともありません。痛いだろうな。やったことないんで、想像ですが。
ただ、
親は「あなたのため」って言うけれど
それって私のためじゃなくて
ただの親の見栄じゃない
は、本当にありましたね。
それと、「成績がいいのに、もったいない。やりたいことは趣味の範囲にして、〇〇大学(旧帝大)を目ざしなさい」って、私の知っている人が本当に言われました。
私ではありませんけれど。
(伊藤一滴)
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