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毒親

今年(2020年)9月、朝日新聞の be に「毒親」についての連載がありました。
読んでいて、私がこれまで見聞きした「問題のある親」たちと似てると思えて、ネットで「毒親」を検索したら、やはり私が見聞きしたこととよく似ています。

「毒親」で検索すると、体験談がたくさん載っています。漫画版もあります。中には、かなり壮絶な体験もあります。


ネットにはいろいろな記事がありますが、毒親に育てられたというAnnaさんという方のホームページに毒親の特徴が簡潔に書いてあり、わかりやすいので引用します。
Annaさんによると、毒親に共通してみられるのが以下の4つの特徴だといいます。
出典:https://yuru-kui.com/parents-standard


引用開始

 自分の人生に責任を持っていない
 子供を傷つけても謝らない
 子供の人格を否定する
 子供の気持ちや行動をコントロールしようとする

1つでもあてはまり、なおかつ、それが1~2回ではなく常にあることなら、毒親である可能性は高いと思います。(原文は、「1つでも~可能性は高い」にアンダーライン 引用者) 

自分がもし親との関係に悩まされているのであれば、まずは、自分の親が毒親だということを認識するところから始めないと、苦しみの解決策がわからず、いつまでも苦しいままです。

引用終了


毒親は自分の人生に責任を持っていないから、一時の思いつきで子どもに何かを言うことが多く、矛盾することを平気で言ったりします。また、自分ができなかったこと(名門校への進学、ピアノの上達、語学の上達等)を代わりに子どもにやらせようとして、それが子どもの幸せだと思い込んだりします。子どもが評価されれば自分も鼻が高いのでしょうが、子どもがうんと高く評価されて賞をもらったりすると、それに嫉妬して嫌なことを言ったりもします。言動に一貫性がありません。自分の発言や行動で何か問題が起きても、みな人のせいにして、責任を取ろうともしません。子どもが頑張って何か始めようとするとき、やる気をなくすようなことを言って邪魔をします。子どもはふりまわされて、ひどい目にあいます。子どもによっては、どうすれば親の機嫌を損ねないのか先回りして親が気に入る子を演じ、いわゆるアダルトチルドレンになったりもします。でも、親に一貫性がないと、先回りするのも難しく、子どもは神経をすり減らしてゆきます。

毒親の親も毒親だったという負の連鎖が多いようです。虐待されて育った子が親になり、自分の子を虐待するのと似ています。

毒親のもとで育ったと思われる50代の人から聞いた話ですが、自分が親になって子育てするときに、ある状況で、どうすべきか、自分自身の経験が参考にならずに困ったとのことでした。自分自身、親から適切な対応をしてもらっていないので、何が適切な対応なのか判断に迷ったというのです。子どもがある程度成長してからは、子どもについ不適切なことを言ってしまうのにも困ったそうです。親から言われて嫌だったことは自分の子どもには言わないようにしようと頭で思っていても、自分が言われ続けてきたことがつい口から出てしまうというのです。

「あんたには無理だよ」
「そんな学校受けたって受からないだろう」(学校以外にも、資格試験、就職試験等)
「あんたは駄目だねえ、それに比べて〇〇君は偉いねえ」
「もしこれでうまくいかなかったらもう終わりだからね」
「あんたを産んでから大変になったんだよ、産まなけりゃよかった」

そんな言葉は決して子どもに言ってはいけないことだと頭では思いながら、ほとんど無意識に口から出てくるときがあるというのです。
親からずっと言われ続けて、刷り込まれてしまったのでしょう。

負の連鎖はどこかで断ち切らないと。

これは、原理主義者やカルト信者の親から育てられた子とも似ています。
原理主義者やカルト信者が親になると、子どもに自分たちなりの「信仰の真理」を刷り込んで、一種の毒親になり、その「信仰の真理」による育児は「信仰」という名の虐待となることがあるのです。ネット上にはそうした事例も多数載っています。健全な信仰が受け継がれてゆくのとは違い、原理主義やカルトの毒親には上の4つの特徴が当てはまります。


毒親に育てられた子は、親の常識的な判断や、社会通念や、親からああしてもらってよかったというモデルを知らずに育っています。
その子は大変な負の遺産を背負っています。そのことに、被害を受けた子の側には何ら落ち度はありません。
でも、たとえ被害者であっても、落ち度がなくても、本人が自覚を持って自分が育つ中で自分に生じてしまった歪みを修正していくしかないのでしょう。
自覚を持って自分の歪みを修正するのは大変だと思いますが、まわりに理解ある人がいれば協力してもらい、場合によっては専門家にも相談し、できるかぎりの努力をすべきです。自分が親と同じことを次の世代に繰り返さないために。負の連鎖を断ち切るために。


では、子どもの側が、毒親に自覚を促し、言動を改めてもらうことができるのでしょうか。残念ながら、これはほぼ不可能なようです。(また、子どもが親の歪みを修正しないといけない義務もありません。)
そもそも、人の意見を聞き、よく考えて、改めるべき点は改める人なら、毒親にはなりません。それができないから毒親であり続けるのです。


Annaさんは、こう言います。

引用開始

では、もし自分の親が毒親かもしれないとわかったら、どうしますか?

すぐに親から離れられる環境であれば、なるべく早く離れてしまうことをオススメします。

引用終了


また、精神科医の斎藤環氏も、「毒親に育てられた人が治療する上での注意点などは」という問いにこう答えています。

引用開始

トラウマというのは忘れられないし、傷は簡単には消せない。例外もあるかもしれませんが、ほとんどの場合、修復は無理です。潔くあきらめて関係性を希薄にする、親を捨てる方向で考えるのが一般的になると思います。言うほど簡単ではないので、夫でもパートナーでも協力が必要になります。カウンセリングを受けるのもよいです。親との関係を温存しておくと、抱えている問題からずっと逃れられない。きちんと捨てる作業をしたほうがいいです。

引用終了

出典:「毒親と関係修復は無理。きちんと捨てる作業を」精神科医・斎藤環さん
https://dot.asahi.com/wa/2020091700054.html?page=1


子どもの側が努力して親を変えるというのは、毒親に関しては、ほぼ不可能なようです。
子どもが小さいうちは、絶対的な力関係の差がありますし、子どもが成人してからだって、「子どもの側の努力で親を変えた、親は別人のように良くなった」などどいう話は、広い世の中全体ではゼロではないのかもしれませんが、私は聞いたことがありません。

親が明らかに毒親で、誰からどう言われても自分を改めようとしない人なら、距離を置き、最終的には関係を絶つしかないのでしょう。


毒親には救いはないのでしょうか。

私は、すべての人に、死の寸前まで、救いのチャンスはある、と思っています。
毒親といえど可能性はゼロではありません。人から言われても改めないかもしれませんが、どこかで、本人が気づいて、自覚を持って自分で自分の歪みを修正しようとすれば、自分を変える可能性はあると思います。高い可能性ではありませんが、ゼロではないと思います。

この問題は、もう少し考えてみます。

(伊藤一滴)

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