エヴァンズ『解き明かされた信仰』読書中
レイチェル・ヘルド・エヴァンズ著『解き明かされた信仰:すべての解答を知っていた少女が質問をすることを学んだ方法』(Faith Unraveled: How a Girl Who Knew All the Answers Learned to Ask Questions (English Edition) Rachel Held Evans 2014 )を読んでます。
彼女はコラムニスト、作家、ブロガーと呼ばれたりしていますが、私は、すぐれたキリスト教思想家の一人だと思います。
エヴァンズ氏はアメリカではベストセラー作家とのことですが、残念ながら著書の日本語訳がありません。
私の語学力で『解き明かされた信仰』を原著で読むのはちょっと大変なんですが、内容がすこぶる興味深いので、辞書を片手に、時々翻訳ソフトも使い、なんとか読んでます。
エヴァンズ氏は、今年、37歳で病死されたそうです。感染症の治療薬に激しい副作用の反応を起こして亡くなったと聞いています。早すぎる死が惜しまれます。
彼女は、アメリカ南部のバーミンガムに生まれ、14歳のときに進化論裁判で有名なキリスト教原理主義の町デイトン(Dayton)に移り住みました。家族も含めてまわりはみな保守的なキリスト教徒で、幼い時から何も疑わずに原理主義的な教えを信じていました。
副題にある「すべての解答を知っていた」というのは、原理主義者はどう聞かれたらどう答えるか、その模範解答をすべて知っていたという意味のようです。
どんな問いにも自分が学んだ模範解答に沿って答えていた彼女でしたが、聡明な彼女は、だんだんに思索を深め、原理主義の矛盾点・問題点に自分で問いを立てるようになってゆくのです。
その過程を著書やブログで発信しており、私にはとても興味深い分野です。(英語がスラスラ読める人がうらやましい。)
彼女は、自分の考えの変化を「進化」と呼びました。原理主義的な考え方を克服してもキリスト教信仰からは離れませんでした。つまり、進化する信仰になっていったのです(※)。
かつて、進化論を教えた高校教師スコープス氏を、聖書に反する嘘を教えたとして裁判にかけたデイトン。近年でも、同性愛を禁じる規定を制定しようとしたデイトン。
その町を、彼女はこう言います。
When it comes to different breeds of Christianity, Dayton is a Galapagos Island of sorts, a terrific destination for anyone wishing to study the evolution of fundamentalism in America.
(異なる種類のキリスト教に関して、デイトンはガラパゴスの一つの島のようであり、アメリカの原理主義の進化を研究したい人にとって素晴らしい行き先です。)
Evans, Rachel Held. Faith Unraveled (p.39)
デイトンは人口7千人と少しの町だそうです。
その町全体が原理主義。
アメリカにはそういう町があるんですね・・・・。
人類文明の「進化」からも、キリスト教の「進化」からも取り残されたように、まるで中世か近世初頭のような世界観・価値観を今も保ち続ける町。
本当に、ガラパゴスの島のよう。
アーミッシュのように、絶対平和主義で、つつましく、他者を攻撃したりしないのなら、取り残された町でもいいと思います。むしろ、世界がそうなってくれたほうが人類は平和に生きていけるのかもしれません。
ところが原理主義者たちは、やたら攻撃的なのです。
進化論を攻撃し、同性愛を攻撃し、自分たちの価値観に反するものをことごとく攻撃します。彼らにとって、自分たちの価値観が聖書の教えであり、真理なのです。
そういう町があるんですね。アメリカに。
やっと今日、39頁まで読みました。
(伊藤一滴)
2019.11.21追記
私の記憶違いで不正確な記述がありました。エヴァンズ氏はデイトンの生まれではなくバーミンガム生まれです。お詫びして訂正します。
なお、訂正のときに全体を見直して書き直しました。
ご参考
エヴァンズ氏が死の直前まで書いておられたブログはこちら
https://rachelheldevans.com/
(英文)
※ちなみに、この『解き明かされた信仰』(2014)は、最初『モンキータウンでの進化』( Evolving in Monkey Town: How a Girl Who Knew All the Answers Learned to Ask the Questions (2010))という題で出されました。モンキータウンとはデイトンのことです。
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