安倍首相、不敬の極み #願っていません
長くなりますが、週刊誌「AERA」2019年5月20日号の田岡俊次氏の記事より引用します。
引用開始
「已む」読めなかった? 安倍首相が歴史的儀式で驚きの大失言
4月に行われた「退位礼正殿の儀」歴史的な儀式での、安倍首相の失言が世間を騒がせた。ミスは誰にでもあるが、それを防ぐ準備は十分だったのか? 首相の姿勢が問われる。
* * *
4月30日、「退位礼正殿の儀」で、安倍晋三首相はおそらく歴史に残る大失言をしてしまった。それが起きたのは「国民代表の辞」のほぼ末尾だ。
「天皇、皇后両陛下には末永くお健やかであらせられますことを願っていません」
これでは、国民の大多数の願いとは全く逆だ。
文書として公表された「国民代表の辞」には当然、「願ってやみません」とある。なぜこんな間違いが起きたのか。動画で確認すると、安倍氏は懐から出した文書を読み上げたのだが、「あられますことを願って」まで進んだところで一瞬口ごもり、その後で「あらせられますことを願っていません」と発言していることがわかる。
「願ってやまない」の「やむ」は「已む」と書く。「己」や、十二支の「巳」と紛らわしい字ではある。安倍氏が手にした原稿では教養のある官僚が漢字で書いていたため、なんと読むかためらって、「願っていません」と言ってしまったのではないかとも思われる。
安倍氏は2017年1月24日、参議院本会議で蓮舫議員に対し「訂正でんでんという指摘は全く当たりません」と答弁した。これは「云々」を、「伝々」と誤って覚えていたようだ。もし「国民代表の辞」の原稿にひらがなで「願ってやみません」と書いてあったのに「願っていません」と言ったのなら、安倍氏は「願ってやまない」という言葉を知らないほど語彙が乏しいのか、意図的に変えたのか。どちらも少々考えにくい。
当意即妙が求められる国会答弁なら「でんでん」も笑い話で済むが、今回の舞台は憲政史上初の儀式だ。その重要な場で国民を代表し、天皇、皇后両陛下に直接あいさつをするのに、下読みも十分にしなかったなら、怠慢の極み。皇室に対する敬意を欠いていると言われても仕方が無いだろう。
だがテレビや翌日の新聞は、公表された原稿の内容を伝え、言い誤りはほとんど報じなかった。記者が聞き耳をたてず、発表文書に頼る風潮を示しているように感じられる。
私が5月3日に動画サイト「デモクラ・テレビ」の討論番組で「あきれた失言」と話すと、他の出演者は「それは初耳」と驚いていた。その後、右翼団体「一水会」が6日ごろからインターネットで批判を始めるなど、言い間違いへの非難は徐々に広がっている。
(略)
戦前の日本では皇室に対する不敬罪があり、「天皇陛下」を「階下」と誤植して出版禁止の行政罰をうけた出版社もあった。新聞社は「天皇陛下」の4字を一つにした活字を作るなどして過失の防止に努めた。幸い、今の日本には不敬罪はないが、国民を代表しながら「未曽有」の失言をしたのはなぜなのか。安倍氏はそのいきさつを国民に釈明するべきだろう。(ジャーナリスト・田岡俊次)
(AERA 2019年5月20日号)
引用終了
5月20日号になっていますが、発売されたのは日付よりだいぶ前です。
5月24日になって、首相官邸の公式ツイッターがこう言ってきました。
(読みやすいように並べて表示します。)
引用開始
1)一部の報道に、4月30日に挙行された「退位礼正殿の儀」での国民代表の辞の最後の部分を、安倍総理が「・・(前略)・・。天皇皇后両陛下には、末永くお健やかであらせられますことを願って『い』ません」と述べた、との記事があります。
2)国民代表の辞は、同日の閣議で決定されたものであり、安倍総理はそれに従って述べています。
3)閣議決定された国民代表の辞の当該部分は、「・・(前略)・・。天皇皇后両陛下には、末永くお健やかであらせられますことを願って『や』みません」とひらがなです。
4)これらの報道にある漢字の読み間違いなどは、ありません。
引用終了
動画が公開されているので私も見ました。
何度聞いても「願っていません」と聞こえます。
発音はやや不明瞭ですが、「いません」か「やみません」かを聞き分けられないほど不明瞭ではありません。
日本語は「ん」以外にみな母音が入りますが、首相の言葉の「願って( )ません」の、( )の母音は1つです。何度聞いても「やみ」とは聞こえません。
上に引用したツイッターを読むと、やみませんはひらがなだから漢字の読み間違えなどはないと言いたいようですが、よく読むと「閣議決定された国民代表の辞の当該部分は」とあり、閣議決定された辞と首相が見ていた原稿の字が違っていた可能性もあります。安倍政権はこれまでも、錯覚させる手法を次々に使ってきました。
原稿は、日本語の教養のある官僚の作文で、「已みません」あるいは「已ません」だったのかもしれません。
仮に漢字で書いてあっても「已みません」を「いません」と読み間違えるはずなどないと、首相をかばう人たちは言いますが、日本語の送り仮名は自由度が高いのです(例「引っ越し、引越し、引越」)。安倍さんの手元の原稿には「已ません」と書いてあったのかもしれないのです。
已然形の「已」ですから、原稿に「已ません」とあったのを「いません」と読んでしまい、閣議決定した文書ではこの箇所を平仮名に書き換えたのではないのですか。
公文書改竄までやってのける忖度官僚たちですから、漢字を平仮名に書き換えるくらいなんとも思わないのでしょう。
両陛下の前での読み間違い(少なくとも、読み間違いに聞こえる)の無礼を、お詫びするでもなく、開き直る首相とその仲間たちに、右派の人たちはもっと怒ってください。
安倍晋三氏らは、こんな不敬の極みのような、皇室に対する敬意などまるでないような人たちですよ。
官邸側の弁解に対し、右派の団体「一水会」が厳しく反論しています。
また「#願っていません」にも、官邸への反論の数々があります。
(一滴)
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