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高市さん、その発言はまずいですよ

11月7日の衆議院予算委員会で、立憲民主党の岡田克也氏から「台湾有事」について問われた際、高市早苗首相は中国の名を挙げて「状況次第で『存立危機事態』になり得る」と答弁してしまいました。

高市さん、その発言はまずいですよ。


「存立危機事態」とは、
「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」
のことだそうです。

その場合、日本が直接攻撃を受けていなくても自衛隊による武力行使が可能になります。

つまり、高市首相は「もし中国軍が台湾に対して武力行使をしたならば、日本が攻撃を受けていなくても自衛隊が中国軍を攻撃することは可能」と言ったのと同じなんです。※

その発言、いくらなんでも、まずいですよ。
そういう発言はまずいと思わなかったのでしょうか?

法解釈を逸脱はしておらず、法的な理屈としては成り立つのかもしれません。
でもそれ、公の場で口にすることでしょうか?

それを言ったら中国が怒り出すと思わなかったのでしょうか?
思わなかったなら、あまりにも思慮が足りないですよ。
中国が怒るとわかっていてあえて言ったなら、そのあとどう収めるつもりだったのでしょう。どう収めるか考えもなく言ったなら、あまりにも軽率です。

どちらであれ、総理大臣が公に言うべきではなかったのです。

私は初めから高市早苗さんの資質を疑っていましたが、ボロが出始めたようです。

今、必死になって火消しに尽力している外務官僚たちが気の毒です。寝る時間、あるのかな。


ネットを見ていると、「高市さん、よく言ってくれた。中国に舐められないよう、強く出るべきだ」といった「意見」が一定数見られます。でも、アメリカも、ヨーロッパ諸国も、高市発言をフォローしてません。今や、中国経済や中国製品なしには、社会が成り立たなくなっているんです。誰も中国と対立したくないんです。強く出るなら出るで、それ相応の国力が必要なんです。実力が伴っていないのに、口だけ強く出たってねえ。
こんな調子だと、国際的に孤立してしまいますよ。なんか、アジア太平洋戦争に向かっていった過去の日本のような・・・。

「立憲民主党の岡田克也氏がしつこく質問したのが悪いのだ。中国とのトラブルの原因を作ったのは立憲だ」といった「意見」も見られます。
「赤い郵便ポストに気を取られて交通事故を起こしてしまった。郵便ポストが赤いのが悪いんだ」ですか?
「高い電信柱に気を取られて交通事故を起こしてしまった。電信柱が高いのが悪いんだ」ですか?
どんな質問を受けても、外交摩擦になるような返答をすべきではなかったのです。言うべきでないことを言ってしまったのは高市さんですよ。批判されるべきなのは高市さんなんです。何でこの件で立憲民主党が悪く言われないといけないんだか。

「個人の見解」のふりをして、高市岩盤支持グループが組織的に高市応援・立憲批判を書き込んでいるのでしょうか?

(伊藤一滴)

※補足します。

「わが国と密接な関係にある他国」とは、アメリカ合州国が念頭に置かれています。

「もし中国軍が台湾に対して武力行使をしたならば、台湾はわが国と密接な関係にある他国に該当するので、日本が攻撃を受けていなくても自衛隊が中国軍を攻撃することは可能」
と言ったのではありません。

いくら右派の高市さんだってそこまでは言いませんよ。
そもそも日本政府は台湾を「国」とは認めてませんし。

高市さんが言おうとしたのは、
「もし中国軍が台湾に対して武力行使をしたならば、米軍の艦隊が出動することになるだろう。米艦が中国軍の攻撃を受けた場合は、日本が攻撃を受けていなくても自衛隊が米艦を守るために中国軍を攻撃することは可能」
という意味なのでしょう。

そういう意味であっても、言うべきではない発言でした。そもそも米軍の艦隊が出動するかどうかはアメリカが決めることであり、日本が想像して、その場合はこうなんて(たとえ思っていても)言うべきでなかったんです。トランプさん、口にしなくても心の中では「米軍の動きを勝手に想像して余計なことを言うなよ」って、むっとしてるかもしれませんよ。

問題になっている11月7日の衆議院予算委員会での高市総理の発言を原文のまま引用します。
ただし、冒頭のカッコ内は引用者の補足
太字も引用者による(スマホの場合、太字が表示されないことがあります)

「(昨年1月にワシントンで『中国が台湾に侵攻した場合には存立危機事態と日本政府が判断する可能性が極めて高い』と言った)麻生副総裁の発言については内閣総理大臣としてはコメントいたしませんが、ただ、あらゆる事態を想定しておく、最低、あ、最悪の事態を想定しておくということは、非常に重要だと思います。まあ、先ほど有事という言葉がございました。それは色んな形がありましょう。例えば台湾を統一、あの、完全に、まあ、中国北京政府の支配下に置くような、えー、ことの為にどのような手段を使うか、ま、それは単なる、ま、シーレーンの封鎖であるかもしれないし、武力行使であるかもしれないし、それから偽情報、サイバープロパガンダであるかもしれないし、それは、あの、色んなケースが考えらえれると思いますよ。だけれども、あの、それがやはり戦艦を使ってですね、そして、武力の行使もともなうものであれば、ま、これは、あのー、どう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます。実際に発生した事態の個別具体的な状況に応じて、政府が全ての情報を総合して判断するということでございます。もう実に、あの、武力攻撃が発生したら、ま、これは存立危機事態にあたる可能性が高いというものでございます。法律の条文通りであるかと思っております。」

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