オウム死刑囚の死刑執行の報道を聞いて思ったこと
10年以上前の本ですが、加賀乙彦『悪魔のささやき』(集英社新書2006年)から引用します。精神科医でもある加賀氏は、松本智津夫被告(当時)と面会したときのことをこう書いています。
引用開始
接見を許された時間は、わずか30分。残り10分になったところで、私は相変わらず目をつぶっている松本被告人の顔の真ん前でいきなり、両手を思いっきり打ち鳴らしたのです。バーンという大きな音が8畳ほどのがらんとした接見室いっぱいに響き渡り、メモをとっていた看守と私の隣の弁護士がビクッと身体を震わせました。接見室の奥にあるドアの向こう側、廊下に立って警備をしていた看守までが、何事かと驚いてガラス窓から覗いたほどです。それでも松本被告人だけはビクリともせず、何事もなかったかのように平然としている。数分後にもう1度やってみましたが、やはり彼だけが無反応でした。これは間違いなく拘禁反応によって昏迷状態におちいっている。そう診断し、弁護団が高裁に提出する意見書には、さらに「現段階では訴訟能力なし。治療すべきである」と書き添えたのです。
引用終了
オウム真理教の事件で、被害に遭われた方々やそのご家族のことを思うと胸が痛みます。
しかし、どんな重罪人であれ、「間違いなく拘禁反応によって昏迷状態におちいっている」という人を処刑していいんだろうか。それって「心神喪失状態」じゃないの? 詐病でそんなこと、できるはずないのに。
麻原を処刑しなければ世論がおさまらないから殺しちゃえ、ってことなのか。世の中に、御用学者がいるように、御用医師、御用裁判官もいて、正当化しちゃうんだな。
それがまず、私の思いです。
オウムの死刑囚も、一人ひとり、人間であり、いろいろです。それを、大雨の混乱の中でまとめて処刑していいんだろうか、という思いもあります。
そういうことを、この国は、するんだな。
そんな思いでネットを見ていたら、かつてオウムの事件を追っていたジャーナリストの有田芳生氏(現・参議院議員)の見解を見つけましたので、引用します。
(https://dot.asahi.com/dot/2018070600022.html?page=2)
引用開始
「国会でモリカケ疑惑の追及が激しくなった時期からオウム死刑囚らの死刑執行が話題になったので、これまで何度も法務省幹部らから状況を聞いたが、世論が沸騰するのは間違いなく、『強い法務大臣の下でないと難しい』などと話していた。だが、今朝、マスコミにリークして7人の死刑執行を敢行した。なぜ、このタイミングだったのか」
「安倍内閣への不信任案の提出、IR法案の審議などで国会はこれから山場を迎える。日本代表の敗退でW杯もひと区切りとなり、国会での審議が注目される時期でもあった。しかし、今回のオウム死刑囚の死刑が執行で報道はそれ一色になり、国会での審議はほとんど報じられなくなる。死刑執行のタイミングには疑問を感じざるを得ない」
引用終了
なるほど、与党に都合の悪いことや国会審議などはなるべく報道されないように、いま、この時期に死刑執行ですか? そう考えれば納得いきます。
広告代理店からでもアドバイスされたのかな?
(一滴)
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