中学校は今 不登校だった息子の言葉
現在中学3年生の次男は、中1の春から学校に行けなくなりました。いわゆる「不登校」でした。
その時は理由も言わず、朝、布団から出て来なくなりました。説得しても、力づくで学校に行かせようとしても駄目でした。私も妻も困りましたがどうすることも出来ませんでした。担任の先生が家に来てくれても、出てきません。部屋に行くと布団にもいなくて、どこかに隠れていたこともありました。(山の中の家なので、隠れる場所はたくさんあります。)
力づくでは駄目だとわかり、スクールカウンセラーの先生に相談したり、心療内科を受診させたりしました。知能は低くない(むしろ高い)、でも、苦手分野があることなどが分かってきました。
担任の先生は一生懸命になってくださり、心療内科の医師のアドバイスも受けながら、中2になって、やっと、だいたいは学校に行けるようになってきました。中学校は別室登校という形で受け入れてくれました。障害児のクラスの生徒たちと一緒に絵を描いたり給食を食べたりできるようになりました。先生の話だと、次男は障害のある生徒たちに優しく接し、人気者になっているとのことでした。中3になり、だいぶ落ち着いてきて、やっとクラスに復帰しました。
今月になって、次男は突然、学校に行けなくなった理由を語り出しました。
私も妻も初めて聞く話がいろいろあって、驚きました。「もっと早く言ってくれればよかったのに」と私は言ったのですが、次男は、これまでうまく言葉に出来なかったと言います。
次男は言いました。
中学校では、意味がよく解らない規則が多すぎる。靴下は白で長さはここからここまでで、ワンポイントまではいいがライン入りは禁止とか、外套はこうだとか、鞄はこうだとか、細かく細かくうるさいほど決まりがある。しかも先生によって言うことが違うし、生徒が勝手に決めたルールもあって、二重基準がいくつもある。休み時間に違うクラスの教室に入ってはいけないという決まりも理由が解らない。小学校で一緒だった友達の部屋にも行けない。
いじめの噂がいろいろあった。自分がされたわけではなくとも、いつ自分がいじめのターゲットにされるかわからなくて不安だった。とくに、障害のある子が駄目な子みたいに言われて馬鹿にされるのが嫌だった。かばったら自分がいじめられるかもしれないと思って、何も言えなかった。そんな自分が嫌でたまらなかった。
スポーツが得意な子ばかりが注目されて、スポーツが苦手だとまるで人間として駄目みたいな感じだ。部活動は強制だけれど、入りたい部がない。僕は文化部に入ったけれど、運動部が上に見られ、文化部の生徒は劣っているような扱いを受ける。中学校は部活が中心で、部活のために中学校があるみたいだ。部活をするために中学校に行き、部活までの時間に授業もあるみたいな感じだ。
スポーツで活躍している生徒が大きな声で何か言うと、その意見が通る。正しいから通るんじゃなくて、そういう子の意見だから通る。
教科ごとに先生が違い、先生たちはその日の宿題の量の打ち合わせなんかしてなくて、いろんな教科でたくさん宿題が重なる日もあった。部活によっては、夜8時半過ぎとか、9時過ぎまでやっていて、宿題をする時間なんてあるのかと思った。宿題と解答が一緒に配られて、自分でやって丸つけ(答え合わせ)もしてくるようにって言われたから、僕はなんとかやろうとして、頑張ったけど、丸つけが間に合わなかった。次の日、先生がいる前で、ある生徒が「俺、宿題の解答を見て写してきたから全問正解だよ」と言っていた。「俺もだ、俺も」って、大声で言っている生徒が何人かいた。先生の目の前だから、聞こえないはずはなかった。だのに先生は何も言わなかった。僕は宿題を解答を見ないでやってきたのに、丸つけが終わっていなくてうんと叱られた。答えを丸写ししてきた生徒は何も言われなくて、自分でやってきた僕はうんと叱られた。そのとき、僕の中で何かが切れたような気がした。次の日から、僕は学校へ行くのをやめた。中学校の方に顔を向けるのも嫌で、布団から出られなかった。
個人的にはいい先生もいるよ。担任の先生だっていい人だし、校長先生だって、僕の話を聞いてくれるし、でも、僕は、・・・・中学校は嫌いだ。
(伊藤一滴)
苦しかった心情と真相をやっと話せるときがきたのですね。それを待ってくれた両親がいとことが、次男さんの財産だと思います。全然、回り道なんかじゃありませんよ!自分の真実に忠実に生きた、たくましい主体としての若者が、育っています。素敵なお話をありがとうございます。
投稿: ぱく | 2015-12-10 23:44
子どもたちには、周りに流されたりせずに、自分はこうありたい、こうあるべきだと思う道に進んでほしいと願っています。次男が学校に行けずに苦しんでいたとき、その思いをすぐには理解できず、申し訳ないことをしてしまいました。これからは、心の思いを察しながら、応援したいと思っています。(一滴)
投稿: 一滴 | 2015-12-21 13:48