皇太子殿下のおことば
皇太子殿下は2月23日に、55歳の誕生日を迎えられました。これに先立ち、記者会見が開かれ、殿下は次のようにおっしゃいました。しかし、マスコミはほとんど報道していません。新聞には、殿下のご発言のごく一部が小さく載っただけでした。
政権与党は、皇太子殿下のご発言が報道されると都合が悪いのでしょうか? マスコミは与党の顔色をうかがって自主規制しているのでしょうか? それとも国民の側が無関心だから、ほんの少ししか報道しないのでしょうか?
できれば、全文を、それが無理でも主要な点は載せてほしかったと思います。皇太子殿下は若い世代のことを気にかけておられます。経済や社会の問題、武力紛争、テロ、難民、環境、国際交流、象徴天皇制、先の大戦の被害と今後の課題等々について、広く語っておられます。
特に印象に残った箇所を引用します。
皇太子殿下のおことばより、引用開始
・・・・技術革新により新たな経済活動が生まれる一方で、世界経済は、先進国、開発途上国の双方が、所得格差や若年者の失業などの課題を抱え、通貨や石油価格の変動などの問題に直面しています。国際情勢に目を向ければ、この1年も中東などで武力紛争が続きました。特に我が国国民を含め市民を巻き込むテロの事件が様々な場所で発生したことに深く心を痛めています。昨年11月にお会いしたグテーレス国連難民高等弁務官から子供を含め難民を取り巻く環境は深刻であるとのお話を伺いました。また、・・・・環境保全や水の問題の解決などを通じ持続可能な社会をいかに実現するかは喫緊の課題です。このように世界の平和と繁栄をいかに将来にわたり実現していくかが今改めて問われているように思います。
・・・・若い世代が、積極的に海外を訪れ、海外の青年と交流し、各国の社会や文化を正しく理解するなど、国民の一人一人が各国との友好を深めていくことを望んでおります。・・・・
今年我が国は、戦後70年を迎えます。この機会に改めて戦争で亡くなられた多くの方々に深く思いを致し、平和を心から願い、世界各国との友好を確かなものとしていくことが大切であると考えています。 ・・・・私は、常々、過去の天皇が歩んでこられた道と、天皇は日本国、そして国民統合の象徴であるとの日本国憲法の規定に思いを致すよう心掛けけております。そして、これまで、象徴とはどうあるべきか、その望ましい在り方を求め続けてこられた天皇陛下と陛下をおそば側でお支えになっておられる皇后陛下のお姿に学びながら、これからも努力していきたいと思っています。
・・・・若い世代が社会の問題に関心を持ち、高齢者や障害者など弱い立場にある人たちを大切にし、思いやりのある寛容な社会を築いていくことも重要だと思います。これからも、このような社会をつくっていくために努力されている多くの方々のお話を伺いながらいろいろと考えていかれたらと思っています。・・・・
先の大戦において日本を含む世界の各国で多くの尊い人命が失われ、多くの方々が苦しい、また、大変悲しい思いをされたことを大変痛ましく思います。広島や長崎での原爆投下、東京を始め各都市での爆撃、沖縄における地上戦などで多くの方々が亡くなりました。亡くなられた方々のことを決して忘れず、多くの犠牲の上に今日の日本が築かれてきたことを心に刻み、戦争の惨禍を再び繰り返すことのないよう過去の歴史に対する認識を深め、平和を愛する心を育んでいくことが大切ではないかと思います。そしてより良い日本をつくる努力を続け、それを次の世代に引き継いでいくことが重要であると感じています。
・・・・私は、子供の頃から、沖縄慰霊の日、広島や長崎への原爆投下の日、そして、終戦記念日には両陛下とご一緒に黙祷(もくとう)をしており、その折に、原爆や戦争の痛ましさについてのお話を伺ってきました。また、毎年、沖縄の豆記者や本土から沖縄に派遣される豆記者の人たちと会う際に、沖縄の文化と共に、沖縄での地上戦の激しさについても伺ったことを記憶しています。
私自身もこれまで広島、長崎、沖縄を訪れ、多くの方々の苦難を心に刻んでまいりました。また、平成19年にモンゴルを訪問した際に、モンゴルで抑留中に亡くなられた方々の慰霊碑にお参りをし、シベリア抑留の辛苦に思いをはせました。
私自身、戦後生まれであり、戦争を体験しておりませんが、戦争の記憶が薄れようとしている今日、謙虚に過去を振り返るとともに、戦争を体験した世代から戦争を知らない世代に、悲惨な体験や日本がたどった歴史が正しく伝えられていくことが大切であると考えています。・・・・
我が国は、戦争の惨禍を経て、戦後、日本国憲法を基礎として築き上げられ、平和と繁栄を享受しています。戦後70年を迎える本年が、日本の発展の礎を築いた人々の労苦に深く思いを致し、平和の尊さを心に刻み、平和への思いを新たにする機会になればと思っています。
・・・・個々のことについてお話しするのは差し控えたいと思いますが、両陛下からのお話の中で、やはり本当に戦争がいかに悲惨なものであるか、こういったことを本当に二度と繰り返してはいけないものだということが、お話の節々で感じ取られ、本当に両陛下の平和を尊ぶお気持ち、それから諸外国との友好関係を大切になさるお気持ち、そういうものが私にも非常にひしひしと伝わってきて、そういったことが私にとっても非常に強く印象に残っております。
引用終了
(全文はこちら http://www.asahi.com/articles/ASH2L5VB7H2LUTIL03Y.html)
(伊藤一滴)
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