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機械式カメラの魅力

カメラが欲しいなんて思うこと自体、物欲なのでしょう。この世の物欲など、超えられるなら超えたほうがよいとわかっているのですが、わかっていても、30年以上前の旧製品の中には魅力のあるカメラも多いです。

1990年代、東京に住んでいました。中古カメラ店のショウケースに並ぶFやF2は「内蔵露出計は保証対象外」と書いてあるものが多かったです。露出不良でも1台5万円以上しました。今、露出計も保証付きで半額くらいになっています(状態のよいものはもっと高いこともありますが)。

1959年にニコンFが発売されたとき、価格は大卒者の初任給の約5ヵ月分だったそうです。今の感覚だと、百万円くらいするカメラです。もちろんプロ用です。
1971年、改良型のF2が出ました。機械式一眼レフの最高峰と言われています。これも、たいへん高価なカメラでした。
中古とはいえ、こうしたカメラが、露出計付きの完動品で、私のヘソクリで買えるのです。往年の名機が激安です。

かつてのプロ用の最高機種がなんでこんなに安くなっているのかというと、一つはデジタルカメラの普及。それと、今では自動焦点・自動露出が標準になり、機械式マニュアルのカメラ操作が瞬時にできる人が少なくなってきたからというのもあるのでしょう。

機械式カメラは長寿命です。露出計以外に電気系統がないので故障が少ないし、万一故障しても直る率が高いそうです。

カメラ店の店員から「そういう故障は直りません」と言われたり、カメラ雑誌に「これこれの故障は直らない」と書いてあっても、調べてみると、直せる業者がいたりします。内部のミラーの剥落がいい例で、「ミラーの剥落は修理不能」と書いてあるカメラの本もありますが、私のOM-1は直って帰ってきました。日本にはまだ、いい意味での職人の意地のようなものが残っています。

「カメラなんて、写ればいいのに」と妻は言うんですが、1960年代~70年代の高級カメラには、ぜひこれで撮りたいと思う、わくわくするような魅力があります。

魅力の一つは、肝心なときに確実に作動する信頼性です(特に寒冷時)。撮影自体には電気を使わないので、電池切れの心配もありません。
もう一つは、被写体に向かう姿勢、精神でしょうか。写真撮影というものは、精神的要素も大きいようです。(伊藤)

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