ニコンFとF2
用事で山形市内に行ったとき、たまたま市内の中古カメラ店の前を通ったので寄ってみたら、かつての高級カメラの中古品がびっくりするくらい安くなっていました。意を決し、自宅に戻って財布にヘソクリを入れ、もう一度山形市に行って「ニコンF」と「ニコンF2」を買いました。どちらも学生の頃から憧れていた機種でした。F2は実用機、Fのほうは、まあ、趣味もあります。
ドキドキしながら、憧れのカメラをゲットし、ヘソクリも尽きました。ストラップをつけたいけれど、買うお金もありません。本当に、財布には小銭しか残らなかったのですが、私はニコニコ顔です。
両方とも露出計内蔵のファインダー(フォトミック)が付いていて、しかも6ヵ月の保証つきでした。約40年前のF2、それ以上前のF、それぞれ露出計まで保証するというのも驚きです。
「保証というのは、保証期間内に故障したら無料修理ということですね?」
と、店員さんに聞いてみたら、
「修理は難しいので、その場合は代金をお返しします」
とのことでした。
(あとからネットで調べたら、どちらもほとんど故障しないカメラだし、万一故障しても、露出計以外はかなり高い確率で修理可能とのことでした。でも、たぶん、修理にかかる費用が販売価格を越えてしまう恐れがあるので「修理は難しい」と言うのでしょう。つまり、「修理は難しい」というのは、修理不能という意味ではなく、無料で修理するは値段的に難しいということだったのでしょう。)
両方とも機械式のカメラなので、カメラそのものは電池不要です。電池切れを心配せずに撮影できて、予備の電池を持ち歩く必要もありません。機械式のカメラは、寒い夜の長時間露出(天体撮影など)にも有利で、今も現役で使われています。
最近のカメラは自動露出なので、「露出計ってなに?」って聞かれそうですが、カメラが手動操作だった時代、絞りに対するシャッター速度の最適値、またはシャッター速度に対する絞りの最適値を出すために露出計が使われました。1970年代以降、露出計内蔵のカメラが標準的になってゆき、さらに、電子制御によって、絞りを合わせるとシャッター速度が自動的に最適値なる(またはシャッター速度を合わせると絞りが最適値なる)の半自動化されたカメラも多くなり、シャッターそのものも電子制御になってゆきました。その後、焦点を合わせる作業まで自動化されてオートフォーカスと呼ばれるようになり、カメラはほとんど全自動になりました。
私は、「撮影者に残された自由は構図だけ」と言っています。
そしてとうとうデジタルカメラが主流の時代になりました。私はもう、ついていけません。
1980年代以降の電子制御化されたカメラは、フィルムを使うカメラも含めて、もう、ちっとも興味がわきません。
FとF2、どちらもカメラ自体は電池不要ですが、ファインダーに内蔵された露出計用のボタン電池だけは必要です。さっそく電池を買って来て、入れて、念のため露出を調べてみたら、2つとも正確で、実用に何の問題もありませんでした。安くなったとはいえ、さすがはニコンの最高機種です。
私は、「各種製品は新しいものから先に使えなくなる」と言っています。古い実用品は簡単に壊れません。
10年前のデジタルカメラで、今も使われているものがどれくらいあるのでしょう。1960年代、70年代の機械式カメラ(もちろんフィルムを使用)が今も実用品として使われているのに。
今では天下のニコンもデジタルカメラ会社みたいになってしまいました。日本のものづくりは何を目ざし、どこへ行くのか。日本だけでなく、世界のものづくりはどうなってゆくのか。短命の量産品を次々にモデルチェンジしながら大量供給し続けるつもりなのか・・・・・。
それでもニコンはまだいいほうです。ニコンという会社は古くからのユーザーを大事にしていて、デジタルカメラになっても以前からのマウント(レンズの差込口)の形状を変えていないし、フィルムを使う古いカメラも、可能な限り修理に応じてくれます。そして、驚きですが、FやF2の「使用説明書」は今も増刷されていて、一部700円で売られています。私もさっそく取り寄せました。
機械式のSPとかF2とかFM2とか、今も欲しがっている人もいます。採算の問題があるのでしょうが、そうしたカメラ本体も生産を続けてくれるといいのに、と思います。(伊藤)
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