復活
「わずか何十万かそこいらの人間が一つの小さな場所に集まって、押し合いへし合いしながら、その土地を醜い畸形にしようといかに骨をおったところで、また地面に何ひとつはやさないようにと、どんなに石を敷きつめてみたところで、石炭や石油の煤でどんなに燻したところで、またどのように木の枝を刈り込み、鳥や獣を追っ払ってみたところで、---春は要するに春である。」(トルストイ『復活』米川正夫訳より)
さすがは世界の文豪トルストイ。自然の大いなる力の前で、人為的な行為の数々がいかにちっぽけなものかよくわかっていたようです。『復活』が発表されたのは今から百年くらい前ですが、そんな頃に、すでに。
仕事で寒河江(さがえ)に行ったら桜が咲いていました。山里もだいぶ暖かくなってきたので、もうすぐ家のまわりでも咲くでしょう。窓を開けて、気持ちのいい風を感じています。
私たちが暮らす山形県村山地方の山里は、冬には家の1階が埋まってしまうほど雪が降ります。あたりは一面の雪原となり、死んだような風景になるのですが、ちょうど今頃、これまでの風景が一変し、花は咲き草は萌え、いきいきとした生の風景に転じるのです。北国の春は「死と復活」という壮大なテーマが実感できる光景です。(伊藤)
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