« 息子の語る「生まれる前」 | メイン | 山形のスローフード・塩引き »

平和を祈ります

浄土宗の開祖・法然は豪族の家に生まれました。一人息子でした。法然の父は漆間時国といい、今で言う警察のような仕事をしていたようです。伝えられる話では、法然が9歳のとき、時国は対立する武士の襲撃にあい重傷を負います。瀕死の父の前で復讐を誓う幼い法然に、父はこう教え、息を引き取ったといいます。

「もしお前が敵を憎み、殺すなら、敵の子もまたお前を殺すだろう。お前の子孫と相手の子孫は互いに復讐し合い、その連鎖は尽きなくなってしまう。そうならぬようお前は仏門に入り、私の菩提を弔い、解脱を求めてほしい」

法然は亡き父の教えに従い出家しました。この遺言、どこまで史実なのかわかりませんが、その後の法然の生き方をみれば、時国は本当にこれに近い遺言を残したのではないかと思えてきます。

現代の世界でも、憎しみが新たな憎しみを生み、暴力が新たな暴力を生み、復讐が復讐を生んでいます。
復讐したからといって自分が幸せになるわけでもなく、自分の子が幸せになるわけでもありません。
お互いを不幸にする、不幸な連鎖が続くだけです。

イスラエルによるガザ地区への攻撃が続いているという報道に、深い悲しみを感じながら、法然の父の遺言を思いました。

自分たちが殺戮された過去をホロコーストと呼び、今、敵を殺戮するのは自衛だなどという二重基準を認めてはいけません。1人殺されたら百人殺して報いるようなやり方を「自衛」と呼ぶのはイスラエルとアメリカくらいなものでしょう。

私は、法然の父の遺言を思いながら、平和を祈っています。(伊藤)

※注:ホロコーストの原義は焼き尽くす捧げ物を意味する神学用語です。「集団殺戮」という意味で使うのは比喩ですが、私は、特定の殺戮に宗教的なニュアンスを持たせて神聖化するような比喩は好ましくないと思っています。かつて、ナチスドイツがユダヤ人を虐殺したのも、今、イスラエル軍がガザの住民に対して行なっている蛮行の数々も、どちらも根は同じジェノサイドです。

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。