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「宗教は民衆のアヘン」

前回「マルクス哲学批判序説」なんて書きましたが、タイトルはもちろんマルクス著「ヘーゲル法哲学批判序説」のもじりです。
この「ヘーゲル法哲学批判序説」は若きマルクスの名著の1つですが、これに、かの有名な「宗教は民衆のアヘンである」という言葉が出てきます。

「宗教上の不幸は、一つには現世の不幸の表現であり、一つには現実の不幸にたいする抗議である。宗教は、悩めるもののため息であり、・・・・・民衆の阿片である」(「ヘーゲル法哲学批判序説」)

これは、貧困や権力の支配に苦しむ民衆にとって、宗教が苦しみを緩和する役割を果たしていたことを、アヘンに例えて言ったのでしょう。
アヘンには鎮痛効果のあるモルヒネが重量比で約10パーセント含まれているそうです。アヘンは、マルクスの時代の高価な鎮痛剤でした。他の文脈からも、この言葉は、「宗教は民衆の麻薬」というより「宗教は民衆の鎮痛剤」と解すべきだ、と考えられます。

鎮痛剤は痛みを止めるだけで病気や怪我を治してはくれません。マルクスの言葉は、「宗教は、民衆の痛み・苦しみを麻痺させる鎮痛剤であるが、その痛み・苦しみの根本原因を取り除いたり、治療したりはしてくれない」と読めます。

今は、どうでしょうか。宗教界は今日もなお、マルクスの問いを突きつけられているのではないかと思います。(伊藤)

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