田んぼって
田んぼっていいですね
田んぼって、本当にいいですね。
17、18日に田んぼに水を入れ、代掻きをしました。
横田不二子さんの『週末の手植え稲つくり』[農文協2000]のカバーの裏にこうあります。
「田んぼは稲が育つだけでなく、(略)多くの小動物が織り成す豊饒の小宇宙です。週末に田んぼにきて、この小宇宙に溶け込む途端に、ウィークデーのストレスや疲労がすべて消し飛んでしまいます。」
これ、まったく同感です。
まだ代掻きの段階で、田植えもしていないのに、水の入った田んぼの中にいるだけで小宇宙のようで、なにか、神秘的な感じさえします。縄文時代の遺跡からも水田の跡が見つかっていますから、はるか縄文から今日まで続く稲作の中に、今、自分もつながったのだと思えてきて、胸が高まってきます。やはり私も米の民の一員なんですね。
山里の田んぼは、風景もいいです。5月の新緑の山々とふもとの眺めは最高です。吹く風もさわやかで、「ウィークデーのストレスや疲労がすべて消し飛んでしまいます」。
休日に私が田んぼで作業していると、子どもたちが遊びにきます。タニシなんて、あまり見たことがなかったのか、興味深げに指でつついています。野生のスミレやいろんな花が咲いていたり、大きなカエルがいたり、いろんな虫や水棲の小さな生き物がいたりして、田んぼのまわりは子どもたちのいい遊び場です。
そのうち妻が娘(2歳6ヶ月)を連れて冷たい飲み水を持って来てくれたりします。それで私も畦(あぜ)に座って一休みです。
そんなの、ほんの数十年前まで、別に珍しくもない光景だったのでしょうが、今ではまわりで作業しているのは高齢者ばかり、家族連れで田んぼに来ているのはうちだけです。山里の田んぼは、大人にとっては心の安らぐ場、子どもにはいい遊び場で、どちらにも恵まれた場所なのに。
まわりの高齢者たちからいろいろ教えていただきながら、私も妻も、今では貴重なこういう地域で子育てができてうれしいです。
街に出たときにスーパーに寄ったら、小麦も食用油もずいぶん値上がりしていました。と言うより、これまでが安すぎたのです。外国の広大な畑で飛行機から農薬を撒くような、徹底した機械化の巨大農業、そして大量の輸送によって、食品の恐るべき低価格が続いてきたのです。
地球環境に無理をかけ、大量の食品を安価に供給し続けるのは、結局は人類の自殺行為に等しい愚行です。
食品は、農業生産者が生活できる当たり前の価格になって、農薬や化学肥料や大型機械の多用から脱し、なるべく地域のものをその地域で無駄なく食べたほうがいいのです。
国内で自給できる米飯は、きっと見直されることでしょう。
余禄を少し。
横田不二子さんは塩選(えんせん)すると塩がもったいなくて抵抗があるので泥水で選別しているとおしゃっています。もちろん、それでもいいと思いますが、塩を使う場合は大袋の天日塩を買ってきて、使い終わった塩水を畑の肥料にすると無駄になりません。天日塩は各種のミネラルを含み、無機質の肥料になります。もともと畑にないものだから、一箇所にたくさんやったりしないほうがいいと思いますが、天日塩の肥料効果は実証されています。
以前、私もトマトの肥料に天日塩を使ったことがありますが、トマトが強くなり、味も濃くなりました。塩害はまずないです。
ふつうの田んぼの入門書などほとんどないのは以前書いた通りです。私の知る範囲では、横田不二子さんの『週末の手植え稲つくり』が最良で、読み物としてもおもしろいです。それと、堀江武編著『新版・作物栽培の基礎』[農文協2004]を辞典のかわりに使っています。この本には細かいことまで書いてあり、重宝していますが、もともと農業高校の教科書として書かれたもので、教科書という性質上、おもしろい本ではありません。それにしても、京大大学院の堀江氏をはじめ、研究機関の農学者らが執筆した学問的で難しい本、一般の高校生が使ってどれだけわかるんだろうかと思えてきます。(伊藤)
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