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地方は国内の植民地?

小泉政権の「郵政民営化」選挙で自民党が圧勝したとき、私は、ナチス党の台頭を連想しました。自民党はナチス党と違って大虐殺はしないだろうけれど、カリスマ的な指導者に喝采をおくる大衆の心理は似ていると思います。
閉塞感の漂う中でカリスマ的な人が現れると新鮮に見え、大衆は期待して喝采をおくります。問題は見えにくくなり、批判の声はかき消されます。その結果、「改革」や「改正」の大きな叫び声の中で、事態がより悪化することはあっても良くなったためしはありません。冷静に考えれば、期待するほどの根拠は初めからなかったのです。郵政民営化で郵政関連の事態はより悪くなると、私は現時点ではっきり予想できます。

あのとき、自民党圧勝についていろいろな見解がありました。「よらば大樹のかげ」的に無党派層の票が自民党に流れたとも言われました。小泉改革の結果、ちゃんとした職にも就けずにフリーターをしている人が、その張本人の自民党に投票するんじゃあ暴力亭主に従う妻みたいだと怪訝に思ったものです。
他に、都市部の普通のサラリーマンの票が自民党に流れたとする説もあり、こっちは私も納得がいきました。

都市部に住むサラリーマンにしてみれば、「私たちが払った税金が地方に食われてきた」という思いがあるのでしょう。サラリーマンですから、収入は明らかで、逃げ道なく徴税されます。「これまで国は私たちから徴税しておいて、そのお金を地方にばらまいてきた」と思えるわけです。
たしかに、小泉政権以前は、地方交付金による公共事業が地方の経済を活性化させていた面がありました。必要あろうがなかろうが、道路をつくり、橋をつくり、砂防ダムをつくり、川をかたっぱしからコンクリートで護岸し、なんとかセンター、なんとか会館、なんとか体育館、その他いろいろを需要の有無にかかわりなく公共事業で造りまくってきました。ようするに、必要に応じてではなく、単に建設業者を動員して地方経済を動かすために土木構造物やハコものを造る、という土建国家の政策を続けてきたわけです。
小泉さんはそういうやり方にストップをかけた、たいしたもんだ、応援しよう、ということになったわけでしょう。
都市部の普通のサラリーマンもそれなりに順調だった頃なら、さほど目くじらをたてなかったのかもしれませんが、給料は上がらない、年功序列も崩れてきた、年金もどうなるかわからない、リストラされるかもしれないなんていう状況では、余裕もなく、不安にもなるし、イライラもするわけです。
それで票が小泉自民党に流れたと考えれば、納得できます。

しかし、まあ、地方にも言い分があります。
「都市に本社を持つ企業が、地方の人件費の安さをあてにして工場を進出させる。彼らは働く場所を提供していると言うが、地方から搾取しているのではないか。しかも海外の方がもっと人件費が安くて得だと判断すれば、海外に工場をつくり、国内の地方工場は縮小したり閉鎖したりして従業員をリストラする」
「都市に本社を持つ大手スーパーや各種のチェーン店が地方に進出し、地元の商店が廃業に追い込まれている。彼らは豊富な商品をお安く提供し、雇用にも貢献していると言うが、地方のお金を吸い上げ、雇用といってもほとんどがパートやアルバイトではないか。しかも不採算となれば簡単に撤退する。撤退したって、一度つぶれた商店街はもとには戻らない。」
「東京は地方から人材も奪っている。地方が育てた人材が東京に行ってしまって帰ってこない。」
「都市の電力は、都市でまかなえばよいのだ。福島県や新潟県に原子力発電所をつくり、東京に電線を引いている。東京の電気を確保するために、地方が原子力の危険にさらされているのはおかしい。」
「自分たちが出すゴミくらい、自分たちの都道府県内で処分してもらいたい。都会がゴミを出し、地方に持ち込むのはやめてもらいたい」
「日本の食糧(カロリー)自給率は約40パーセントというけれど、都道府県別で見ると北海道は200パーセント、秋田県が160パーセント、山形県が130パーセント強で地方は高い。それに対して東京都の食糧自給率は1パーセントに過ぎない。都道府県単位で食糧を自給したらどうなるか、想像してもらいたい。」
「なんだかんだ言いながら、ようするに地方は、都市の植民地にされ、食われ、都合よく利用されている。」

答えはでません。
土建国家に戻せば地方は活性化するのでしょうか?
国と自治体が800兆円を越える負債をかかえている現状で、一時的な経済効果以外ほとんど意味もない建設の費用をどうやって捻出するのでしょう。それに、かつてどんどん造った土木構造物やハコものを維持する(場合によっては解体する)費用が、地方を圧迫している現実もあります。

未来を考えないといけない、しかし、未来を考えるのが難しい、そんな中にみんな生きています。(伊藤)

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