補足:無駄なものをつくる
前回の話にもう1つ補足すると、「無駄なものをつくる」というのもあります。
たとえば洗剤を、お風呂用、レンジまわり用、換気扇用なんて分けることに意味はないんです。どれも油脂の汚れなので、石鹸水をかけてしばらく置けばよく落ちるのですから。単にイメージで売っているだけです。ささいなことのようですが、その総量は膨大です。
抗菌も、はやりですが、無菌室の病人じゃあるまいし、一般家庭では有害無益と考えていいでしょう。これも何となくイメージで売っているんです。そうやって、何も悪いことをしていない菌たちを薬剤で殺します。
家庭用の洗剤や抗菌製品から、必要性の疑われるダムに道路、干拓事業に河口堰・・・・・、大小さまざま、無駄なものをつくって経済を動かす。生き物たちはその場限りの人間の行為で殺戮されます。先人が大切にしてきた里山を産廃の山にし、空気を汚し川や海を汚し、人間自身が住みにくい、生きにくい状況をつくりながら、借金を未来に残す。これが産業立国、今日の日本資本主義の姿です。
「そんなことを言っても、みんな生きていかないといけないんだから」と言われそうですが、自然環境も社会環境も悪化させながら、みんなでお互いを食い合う消耗戦です。みんなで自分たちや、自分たちの子孫を葬るに等しいことをしています。
現代日本の産業文明の正体が見えているのでまとめてみます。
1.他社の売り上げを減らすことで自社の売り上げを伸ばす
2.画期的な新製品を装いながらたいして意味のないモデルチェンジや多機能化で売る
3.海外に対しては、現代の帝国主義を方針とする
4.役に立つように思わせ、まるで意味のない、無駄なものをつくる(2とも関連)
人のことも地球のことも考えない。資源も人間も使い捨て。人間は短期間で使い捨てるか(臨時)、長く酷使して消耗するまで使い切るか(正社員)。どっちを選んでも人間は使い捨て。いっときの利益のために今を生きる人間を食いつぶし、過去の遺産も未来の可能性も食いつぶす。そうやって経済を動かし、住みにくく、生きにくくし続けています。
公共機関や、医療・福祉・教育などの分野で働く人たちはこうした産業から独立しているように見えますが、そうでもありません。さまざまな形で産業に組み込まれていますし、そもそも、こうした人たちを支える資金の元は産業です。
私は、未来の悪夢を見ました。
日本経済は破綻し、貿易も破綻。食料も石油も入ってこなくなって、餓死者や凍死者が続出。葬ることさえ出来なくなり、野山や廃墟に、たくさんの遺体が放置されている光景です。そんな中でも人はどこまでも競争し、互いに協力しようとはしません。
そんな悪夢は、大ハズレだといいんですが・・・・・。
未来を担う子どもたちに、どう理想を語ればいいのか、私も困っています。
今の世の中、みんな競争、競争です。特に都会の子どもたちは小さいときから過酷な競争です。かわいそうです。私のいる田舎はまだのんびりした雰囲気がありますが、ここで育った子どもたちだって、やがて相当数が都会に出て行き、熾烈な競争に巻き込まれるのでしょう。
いったい、どう、理想を教えればいいのでしょう。
産業日本は何を目ざし、どこへ行こうとしているのでしょう。
日本だけでなく、世界の産業文明は、いったいどこへ行こうとしているのでしょう。(伊藤)
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