布おむつのこと
山里は、寒い日が続いています。外に出ると、吐く息も凍るんじゃないかと思えるくらい寒いです。
朝晩は、道路がツルツルに凍りついていて、歩くのも車で走るのもちょっと怖いです。
家は1階が雪の中に埋まっており、昼だか夜だかわからないみたいになっておりますが、土間の薪ストーブは暖かく、ちょっと燻製のような匂いがしています。
いつものように、土間には旗のようにおむつや衣類が干してあります。
布おむつなんか使っていたら不便でしょう、大変でしょうと言われることがあります。でも、では紙おむつは楽かと言うと、そうとも限りません。
山里に暮らし、しかも季節は真冬の厳寒期です。雪の中、ふもとに下りて、かさばる紙おむつを買いに行く手間。雪道を運んで来る手間。使用後に始末してゴミ袋に入れ、ゴミ回収日の朝、重くかさばるゴミ袋を持って凍った道を歩いて出しに行く手間。簡単便利に思える紙おむつですが、実際はそうした手間がかかり、しかも、買うたびにお金もかかります。布おむつは何度でも使えるので、洗って干すだけで、上記したような手間もお金もかかりません。洗濯も、お風呂の残り湯を主に使うので、かかるのは多少の粉石鹸代とすすぎに使うわずかな水道代くらいです。
わが家でも、外出時や夜間など、やむをえず紙おむつを使うこともありますが、そうした限られた使用でさえ、相当のゴミが出ます。もし百パーセント紙おむつなら、いったいどれくらいゴミが出るんだろうと想像してしまいます。簡単便利の追求は、ゴミも増やします。生産から廃棄までの労力を考えたら、労力のトータルは昔よりかなり増えているのではないかと思います。
それに、これはまた別の問題かもしれませんが、紙おむつに使われている化繊や漂白剤、高分子化合物、その他の化学物質は、絶対に安全だと言い切れるのでしょうか。生まれたばかりの赤ちゃんに種々の化学物質が使われている製品を使い続けて、本当に大丈夫なのでしょうか。布おむつであれば、合成洗剤で洗うのはやめて昔ながらの粉石鹸を使うなど、使う側の判断で決められますが、紙おむつはメーカーのラインナップから選ぶしかありません。
もう一つ、布を使う利点は、成長に合わせて買い換える必要がないことです。男女別もありません。折り方を工夫したり2枚使ったりすることで、ずっと同じ布を使えます。うちでは、7年前に長男が生まれたときの布おむつを今も現役で使っています。
ただ、問題はおむつカバーで、今後もメーカーが生産し続けてくれるかどうか。7年前は、近くのお店で、おむつカバーくらい簡単に買えたのです。それがたったの7年で、すっかり見かけなくなりました。これも産業が供給する製品ですから、売れなければ、売らなくなり、やがては生産中止になるのでしょう。そのときは、家庭で工夫して自作するしかないのかもしれません。
おむつのことは一例に過ぎませんが、日常生活の隅々にまで産業が入り込んでくるような暮らしに少し距離を置くと、それでだいぶ楽になることもあるのではないかと思います。(伊藤)
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