30年ぶりのスキー
30年ぶりのスキーというのは、誇張でなくて、本当の話です。
小学1年の長男が、学校行事でスキーに行くことになり、保護者も同伴してほしいということで、息子の分と私の分のスキー用具を用意しました。
私にとって、スキーは小学校のとき以来、約30年ぶりです。息子には新品を買ってあげましたが、私の分は、中古屋で用具をそろえました。オーストリア製のスキー板とストックがセットで4千円。デサント社のスキーウエアが上下セットで200円! 予備にウエアをもう1セット買って、こっちは1200円。中古品の値段というのはよくわかりません。帽子だけ、手ごろなものが中古屋になくて、スポーツ用品店に買いに行ったら4千円! ついでに新品のスキー板やウエアも見てみたら、どれも何万円もしました。有名ブランドのウエアは5万も6万もしました。スキー用具一式新しいのをそろえたら10万円以上かかるでしょう。今のスキーはお金のかかるスポーツになりました。
わが家の周りが練習場になってます。なにしろ、私の背丈くらい雪がありますから、雪に不足はありません。お隣りの家まで続く下り坂は格好のゲレンデです。お隣りと言っても、山里ですから、100メートル以上あるんです。
春、夏、秋は段々畑で、冬はスキー場に早がわりとは、ぜいたくな話です。ただし、帰りはスキーをかついで上って来ないといけませんが・・・・・。
なんで30年ぶりのスキーかと言いますと、実は、私が小学生のとき、威圧的なスキー指導員がいて、さんざん罵倒されたのです。その人は、子どもをののしって指導すると、上達するとでも思っていたのでしょうか。しかも、同級生の中に少しうまいのがいて、そのことを鼻にかけて威張り、下手な子を馬鹿にしていました。指導員はそういう高慢な子をたしなめるでもなく、むしろ、スキーがうまいのをほめていました。そういうことがたび重なるうちに、私はスキーが嫌いになり、その後スキーをやめました。一切やめました。
大学生だった80年代、スキー、アフタースキー、トレンディードラマ、ユーミンの歌などがちょっとしたブームでしたが、私は1度もスキーに行きませんでした。スキーには、不愉快な記憶がまとわりついていましたから。
今回、わが家の長男のスキー行事のことがなければ、私が再びスキーを始めることはなかったでしょう。
学校のスキー行事があると聞いたとき、最初は「やだな~」と思ったのです。独り言のように、ブツブツ言いながら道具を買いに行きました。
ひととおりの用具を準備してから、まず私だけで、スキーをはいて家の周りを歩いてみました。複雑な気分でした。それから恐る恐る、ゆるい斜面をすべってみました。そうやって、少しずつ体を慣らしてから、嫌な記憶を振り払うみたいに一気に斜面をすべりおりました。そしたら、楽しいんですよ。30年の呪縛が解けた感じです。上手じゃなくとも、それなりに楽しめば良かったんです。
小さな子どもがいる暮らしは毎日があわただしく、子どもがいるから、あれもできない、これもできないと思えるときもあります。でも逆に、子どもがいるから、あんなことができた、こんなこともできた、ということもあるんです。
30年間の私の呪縛を解いてくれた小学校のスキー行事に感謝です。(伊藤)
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