夜の訪問者
先日の、夜の11時頃でした。
ふだんは、そんな時間はもう寝ているのですが、その夜はたまたまその時間、お風呂に入っておりました。そしたら、連れ合いが呼ぶんです。
「パパ、ちょっと来て。外で変な音がする」
犯罪のない山里で、留守でも鍵もかけないような地域ですから、まさか不審者ではないだろうと思いましたが、急いでお風呂から上がり服を着ました。耳を澄ませてみると、たしかに、外でゴトゴト壁をこするような音がします。何か動物だろうと思いましたが、念のため、懐中電灯を持って外に出てみました。ナタやカマを持ち出さなかったのは、もしもの場合でも、なるべく相手に怪我をさせたくなかったからです。いざとなったら懐中電灯を投げつけて家の中の逃げ帰ろうという気持でした。山里の夜は、月夜でなければ真っ暗闇ですが、その夜は曇り空で星も見えず、外は何一つ見えない漆黒の闇でした。
玄関先で、少し闇に目を慣らしてから外に出ました。音のするほうまでそっと歩いて行って、ぱっと懐中電灯の光を向けたその瞬間、目が合いました。猫よりも大きく、狸よりも鼻先がとがっていて、パンダのように目のまわりに縁取りがある動物でした。一瞬キョトンとして私の方を凝視し、それから無言で闇の中に消えていきました。
私はあっけにとられ、あれはいったい何だろうと思いました。
家に戻って連れ合いに話したところ、連れ合いは「狸じゃないの」と言うのですが、私はハクビシンかもしれないと思いました。隣町でハクビシンが出たという話を聞いていたからです。狸か、狐か、ハクビシンか、アライグマか、2人でいろいろ想像しましたが結局わからず、ポケット図鑑で見てみたら、アナグマに似ていました。
気になったので、インターネットでそれぞれの写真を見比べてみたら、やはりアナグマに似ています。(伊藤)
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