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米不足に思う

米が不足していると報道されています。

たしかに、米の産地である山形県の田舎町でさえ、お店のお米売り場が空っぽだったり、一人一点と購入制限がついたりしていました。

稲作をしている私にも問い合わせが来ていますが、もう自家用分しか残っていません。
私も、昨年は暑すぎて(そして、私の場合は高齢の父母に手がかかって田の管理がうまく出来ないこともあって)、思うように米ができませんでした。今年もかなり暑いので、高温障害にならないように9月になっても水を入れて田面を冷やすなど、かなり気をつけています。でもこれ、やり過ぎると稲刈りの時期になっても田んぼが乾かなくなって泥まみれの稲刈りになり、機械のスタックなども起きて苦労するでしょうから、いつまでどれくらい水を入れるか加減が難しいです。

昨年の猛暑による全体的な米の品質低下、インバウンド需要などによる米の消費拡大、南海トラフ地震を警戒しての米の買い置きの広がりなど、複合的な原因で米が店頭から消えてしまったようです。


我が国の主食はお米です。
だのに米の生産はお金にならず、稲作農家は報われていません。

年によって米価の変動もありますが、農協は農家から玄米1俵(60キロ)を1万円強くらいで買い取っています(1万円を割った年もありました)。
でも、玄米1俵を生産するのに、およそ1万円かかるのです。大量に生産すればもう少しは安く作れるのでしょうが、どうがんばってもかかるものはかかり、限度があります。

稲作がメインの農家は、何十ヘクタールという広大な田んぼで、家族総出で作業して、サラリーマン1人の年収くらいになるのでしょうか?
いろいろ補助金が出るから何とか生活できても、米を売って得られる収入だけでは食べていけません。(農家は補助金で潤っているみたいな話は非農家が語るガセネタで、何とか生活しているのが実態です。)

特に零細農家の稲作の場合、ほぼ無給です。零細農家の多くは兼業か年金生活者です。農業以外の収入や年金で生活し、農機具が故障すれば貯金を切り崩して修理したり中古の機械を買ったりしながら、収益にならない米を生産しているのです。

主食の生産がそんな状態でいいのでしょうか。


日本の米は高いと言う人がいますが、他の食品と比べて、決して高くはありません。
今、国民1人当たりの米の消費量は年間約60キロだそうです。
この60キロの米を、農家は約1万円で出荷し、消費者は少し前まで2万円~数万円で買っていました。

たとえば、60キロの米を2万2千円で買ったとすれば、1日あたり約60円です。1食あたりじゃありませんよ。1日あたりの米代が約60円です。
パン、麺、おかずの値段を考えたら、あるいはお酒の値段を考えたら、1日あたり60円の食糧の支出を高いと言えるのでしょうか。

私は、倍でもいいと思います。
農家から玄米1俵(60キロ)を2万円以上で買い取り、消費者には4万円以上で売る。
あるいは、赤字を政府が補填する形で、2万円以上で買って消費者に1万5千円~2万円で売ってもいいんです。
赤字分は安全保障費です。主食の安定供給も我が国の安全保障ですから。

これまで与党政治家は、国の安全保障は軍事面しか考えてこなかったのではないのですか。
アメリカと同盟関係にある、最新鋭の武器弾薬もある、訓練された自衛隊員も十分にいる、だが米がない、外国の食料も入ってこないなどという状況になったら、国の安全保障は0点ですよ。


大農家は家族総出の重労働、零細農家は無給労働、農業離れが進み、農山村は荒廃してゆく。
日本のカロリーベースの食料自給率は38%(2023年度)。

そんな状態でいいのでしょうか。

(伊藤一滴)


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