映画「ローマ法王になる日まで」
映画「ローマ法王になる日まで」をDVDで観ました。
Amazonで日本語字幕付きを買って、正月に自宅で妻と観ました。
現在のローマ教皇(法王)フランシスコ(就任前の名はベルゴリオ)が、教皇になるまでを描いた実話に基づく映画です。
その夜、私は、なかなか眠れず、寝てからも何度も目を覚ましました。
それくらい、衝撃的で、強烈でした。
ネット上のAmazonの「商品の説明」にこうあります。
引用開始
(略)ブエノスアイレス生まれのベルゴリオは20歳でイエズス会に入会し、35歳の若さでアルゼンチン管区長に任命される。ときはビデラ大統領による軍事独裁政権下。反政府の動きをした者は容赦なく殺害された。神学校院長のベルゴリオのもとには問題を抱えた一般市民や彼らを支援する神父たちが次々と相談に訪れるが、神学校にも軍のスパイの神父がおり、軍の圧力がじわじわと迫ってくる。
1985年、暗黒時代は終焉。失意のもと神学を学ぶためドイツに留学したベルゴリオ。ある日、引き寄せられるように足を踏み入れた教会で「結び目を解く聖母マリア」の絵と出会う。「誰もが結んでしまう苦悩の結び目を解いてくれる」というマリア様に、自分の“結び目"を心で唱えたベルゴリオは、涙が止まらなかった。その後アルゼンチンに戻り、田舎の一神父として穏やかな日々を送っていたが法王ヨハネ・パウロ2世の任命を受け補佐司教としてブエノスアイレスに戻り、立ち退きを迫られた貧困地区の住民たちに寄り添うこととなる―。
2013年、枢機卿となっていたベルゴリオは質素な自宅アパートでラジオから法王ベネディクト16世の辞任表明を聴く。そして、コンクラーベに参加するためにバチカンへと向かった。
引用終了
ネタバレのようなことはここには書きませんが、映画は時代背景の説明なしに進むので、あらかじめ知っておいたほうがいいことがいくつかあります。
教皇フランシスコは南米のアルゼンチン出身であること。
アメリカ大陸(南北アメリカ)出身者が教皇になるのは歴史上初めてであること。
1976~82年、アルゼンチンはビデラ大統領の軍事独裁政権下にあった、ということ。(何の説明もなくペロンという名前が出てきますが、前の大統領の名です。)
ビデラ軍事政権下に、軍による暴行、連行、拷問、超法規の殺害などが多発し、3万人以上の国民が殺されたり行方不明になったりした、ということ。3万人以上ですよ! 3万人以上のアルゼンチン人が、戦前の日本の大杉栄・伊藤野枝夫妻や小林多喜二みたいに公権力によって超法規的に抹殺された!
軍政下のアルゼンチンでは、薬物を注射されて生きたまま飛行機から海に投げ捨てられた人たちもいました。おびただしい遺体が海岸に流れ着いたそうです。
(ネット上の「汚い戦争」、「死の飛行 アルゼンチン」参照。)
「死の飛行」のことはこの映画で初めて知りました。それもささいなことで連行され、二度と帰ることのない「死の飛行」の飛行機に乗せられたのです。
ドイツのヒトラー、ソ連のスターリン、カンボジアのポルポトらは有名ですが、アルゼンチンのビデラ大統領とその部下たちによる拷問や大量殺人は日本ではあまり知られていません。
後に教皇フランシスコとなるベルゴリオ神父はそういう時代を生きたのです。
ベルゴリオ神父は軍政に反対しなかったという批判もありますが、もしはっきりと反対していたら殺されていたことでしょう。自分が殺されるだけではなく、関係者(教会や修道会の人たち)も巻き込まれたかもしれません。
そういう時代に、彼は、難しい舵取りをしながら、良心に従って行動した人だと思います。
(伊藤一滴)
コメント