「新しい判断」本当の話
前回の「新しい判断」は、私の戯作、戯言(ざれごと)ですので、そのつもりでお読みください。「実在の人物とは一切関係ありません」。
以下は、戯言ではなく本当の話です。
「朝日新聞デジタル」 2016年6月1日 より引用
安倍晋三首相は1日の記者会見で、消費増税の再延期について「これまでのお約束とは異なる、新しい判断だ。公約違反ではないかとのご批判があることも真摯(しんし)に受け止めている」と強調。「アベノミクス加速か、後戻りするのかが参院選の最大の争点だ」と述べた。
引用終了
「週刊朝日」 2016年6月17日号より、スイス銀行出身の経済アナリスト豊島逸夫氏の見解を引用
「増税延期は、経済的には負荷を緩めたという意味がある。ただ経済成長に結びつけるには、財政出動によるカンフル剤だけでなく、病巣をえぐるような構造改革が必要。これは数年がかりの仕事で簡単に結果は出ない。日本経済が19年秋ごろに消費税10%に耐えられるほど良くなっているかと言えば、ノー。消費増税はたぶん無理です。安倍氏も負け戦をするとは思えない。18年には『私も任期ですから失礼します』と投げ出すでしょう」
引用終了
「消費税の増税が延期されてよかった、さすがは安倍内閣だ」なんて人が増えて次の選挙でも自公圧勝となれば、自民党の草案に沿った憲法全面改正、日本の軍事化、経済の行き詰まり、そして政権投げ出し、となるのではないかと思えます。
我々国民にできるのは、投票に行って、自公政権に反対する候補者や政党に投票することです。そうやって自公の議員を可能な限り減らすのです。そのあとのことは、そのあと考えればよい。それを無責任と非難するのはおかしい。どうせ与党にだって、長期的な展望などないのですから。
今、日本は1千兆円を超える借金を抱えていますが、これは、自民党およびその仲間たちがこしらえた借金です。たいして意味のない公共事業やさまざまな交付金で、お金をばらまいて、支持工作をしてきたのです。私たちの子や孫に借金を背負わせる形で未来からお金を借りて、そのお金をばらまくことで、票を買うようなことをし続けてきたのです。
付け加えて言えば、「新しい判断」などという人を馬鹿にした言葉にもっと批判が巻き起こるかと思ったら、意外と静かです。多くの国民は、世の中に蔓延するつじつまの合わない話の数々に慣れてしまって、筋を通して考えようとしなくなってしまったのでしょうか。どうも、「筋を通す日本」ではなく、「空気を読む日本」「場の雰囲気に流される日本」「なんとなく流されてゆく日本」になってきました。
安倍晋三氏は以前から、日本国憲法を頂点とした法の秩序を軽んじる人でしたが、とうとう自分自身が断定した言葉までひっくり返すようになりました。「私がどんな言葉で約束をしても信じてはいけません、あとからいくらでも別なことを言います」と自分で言っているようなものです。どうせみんなすぐに忘れると思っているのか、安倍氏の言葉には一貫性がありません。一貫しているのは、反憲法と好戦的姿勢くらいです。
言っていることが支離滅裂なのに、なぜ、安倍内閣の支持率が高いのでしょう。野党のふがいなさもあるのでしょうが、経済の成長も翳ってきて自信を失った人たちが、力強い日本という幻想にすがろうとしているように思えます。ヨーロッパに広がる差別主義やアメリカのトランプ現象と似ているようにも見えます。そしてまた、今も目を覚まさずに、あまり意味のない公共事業のバラマキに群がろうとする人たちが、まだ日本には多数存在するのです。それは未来からの借金なのに。
(伊藤一滴)
コメント