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神は存在するのか

神は存在するのか? 

この問いには答えようがありません。まず、神とは何かをはっきりさせなければ、答えようがないのです。問う人が思っている「神」と、答える人の「神」とが、まるで違うイメージであれば対話は噛み合いません。お互いに、「あなたの言う神は誤りだ、本当の神ではない」ということになってしまいます。これを、たとえば、「キリスト教の神」とか「イスラム教の神」とか限定しても、ではキリスト教とは何か、イスラム教とは何か、という定義が必要になります。この定義も容易ではありません。宗教には教派があり、教派間の見解の相違があります。また、同じ教派内でもグループがあり、考えが違うこともあります。同じグループに属していても個人的な考えの食い違いもあるでしょう。

この宗教のこの教派のこのグループのこの人の解釈によって定義される神の存在を、あなたは信じるか?

と聞かれて答えられるでしょうか? そしてそのように厳密に定義を限定した神は、はたして神なのでしょうか。

定義すること自体、人間の言葉によって、これはこうであると定めることです。人間の側が、自分たちの言語による認識が及ぶ範囲で、神はこういうものだと定めることができるのか、という疑問があります。神はこういうお方であると述べ始めた瞬間に、人間の言葉の及ぶ範囲に神というものを限定してしまうことにはならないのでしょうか。言葉で表わすことができるのは、人間の思考の範囲の神に思えます。

神は存在するのか? という問いは、答えられなくなる問いなのです。

(伊藤一滴)  

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