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フジマキに聞きたい

藤巻健史著『日本破綻』[講談社]を読みました。
この本、反論もたくさん出ていて、反論の多くは「日本は破綻などしない」とする見解です。

私も藤巻氏に反論したい点がいくつもありますが、私の場合はちょっと違います。私は、藤巻氏がおっしゃる通り日本は破綻に向かっていると思いますから、日本の財政は破綻寸前という主張そのものには賛成なのです。しかし、私は藤巻氏のように資本主義そのものを是とは考えておりません。

前に言ったことと重複もありますが、私は次のように考えます。

そもそも、資本主義に理想の形なんてあるんでしょうか。
必要なのは、資本主義をあるべき姿に建て直すことではなく、資本主義の末期をどう生きるかでしょう。
これだけ末期的な症状が数々現れているのに、資本主義は末期ではないとおっしゃるのでしょうか。

社会主義は長期的には持続しないシステムなので、雪崩のように崩壊しました。
資本主義も長期的には持続しないシステムでした。

藤巻健史氏は三井信託銀行やモルガン銀行で活躍した名高い人であり、金融の分野では博識の人ですけれど、氏の経歴や博識が邪魔をするのか、「資本主義も歴史の中に成立した形態の一つに過ぎず、長期的には持続しないシステムである」という視点が完全に抜け落ちています。

内需が飽和なら外需に切り替える、でいいのでしょうか。
海外にどんどん売りまくって世界中を日本のようにモノ余りの状態にすれば、世界の人が幸福になったりよりよくなったりするのでしょうか。

モノがない時代や戦争で破壊された後であれば、モノが必要でしたから、作れば売れました。
今は、大量生産システムや大量輸送システムが確立し、どんどん作ってどんどん売ることが可能です。その結果、供給能力が需要をはるかに越えてしまったのです。完全な供給過剰です。作る側は、作り続けて売り続けないことには会社が続かないので意味のないモノを作って売ったりつまらないモデルチェンジを繰り返して売ったりしてきましたが、だんだん消費者もだまされなくなってきました。

国内の需要が飽和したから海外への売り込みを強化ですか。
世界にだって、無限の需要などありません。

現代の資本主義を支えるためには、膨大な原料資源、エネルギー資源が必要です。この資源も無限ではありません。今だって、貧国から搾取したりしながら資源をまかなっているのでしょうが、仮に資源の供給を当面順調に続けたとしても、産業社会は必ずと言っていいくらい公害を出します。公害を抑えようとすればコストが増します。

モノを作り続け、売り続ければ、必ず廃棄物も発生します。昔の木製品や綿や和紙などは燃やしても害はなかったでしょうが、今、特に石油系の廃棄物は世界的な環境問題を引き起こしています。石油に依存することによる環境汚染は種々ありますが、私は、石油使用の最大の廃棄物は二酸化炭素だと思います。

二酸化炭素が問題だからといって、石油から電力へ切り替えたりすれば、原子力事故の多発や放射性廃棄物の処理問題が途方もない長期の未来に及び、収拾がつかなくなることでしょう。

どっちみち、資本主義というシステムに支えられた産業社会そのものが未来永劫持続するものではないのです。

人類が絶滅するまで、資本主義を続けていくべきでしょうか、藤巻さん。
生きるためにはお金が必要というけれど、そのために熾烈な競争・争奪戦を続けることが、今の、そして未来の人々の幸せにつながるのでしょうか、藤巻さん。

私は、田畑で汗を流し、家の野菜や家の鶏の卵を食べ、囲炉裏で魚を焼く生活に十分満足していますけれど、どうでしょう。(伊藤)

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