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次の時代へ

産業文明は破綻に向かっていくだろうと、私は以前から申し上げておりますが、破綻は経済上のことだけではなくて、さまざまな分野で、それこそ総合的に進行しているように見えます。

でも、私はそれほど悲観しておりません。
何かが終わるというのは、次が始まるということです。
「おかしな時代になった」と言う人がたくさんいますが、違います。戦後の経済成長やバブルの日本が正しくて、その後おかしな時代になったのではなく、なるべくしてなったのです。現在の状況は、こうなる原因があってそのとおりになったのです。
私見では、産業文明が初めから持っていた矛盾が拡大し、制御が難しくなってきた、ということだと思います。

かつて多くの人は、産業文明の先にバラ色の未来を描いていました。マルクスも、ケインズさえも、条件が整えば、機械化が進むことで労働時間が短縮されると考えていました(驚き!)。でも現実は、現代の状況を見ればわかるとおり、まるで逆です。機械化が進めば進むほど、働く人は忙しくなり、余裕を失いました。
博識の経済学者たちでさえ、機械化でますます忙しくなると予測することができなかったのです。
機械化の延長線上で電子化です。パソコン、ケータイ、各種の電子制御化で「いっそう便利」になり、人はいっそう忙しくなりました。仕事は電子的な管理下に組み込まれ、つまらない仕事が多くなりました。道具や機械を使いこなす技術や、技術の伝承もいりません。電子制御ですから。人間は電子機器の下僕です。それに、どうせ覚えたってすぐ新製品に替わってしまいます。
今後、これ以上の技術革新で「さらに便利」なものが普及することになったら、生身の人間のほうがもたなくなることでしょう。

最近、うちの子どもたちに、バージニア・リー・バートン作『ちいさいおうち』[石井桃子訳、岩波書店]を読んであげたのですが、第二次大戦中に書かれたこの絵本の産業文明批判の鋭さに驚きました。それも、厳しい口調ではなく、おだやかな言葉で、じんわりと、産業文明批判が伝わってきます。
この絵本、古い住宅の再生に関心のある人にも是非おすすめの1冊です。

産業文明の時代は終わりに向かい、やがて、次の時代が来るのでしょう。
人類が次の時代を迎えることが出来たなら、次の時代には、たぶん、20世紀から21世紀初頭の急速な産業化の愚かさが語られることでしょう。(伊藤)

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