« 権威主義的パーソナリティー | メイン | 地方は国内の植民地? »

よりかからず

何の家柄も財産もない人間が地方にいて、一切の官職に就くことなく、大企業や大組織の一員にも、金持ちや偉い人の手下にもならず、学や政治の力とも無縁に生きようとすれば、待っているのは貧乏暮らしです。そういうわけで、私も貧乏暮らしの一員ですが、山里の古民家のつつましい暮らしの中で感じるのは、このうえない解放感です。

ますます進む格差社会。都市部と地方の格差も激しく、地方の名もない人間が、何の権威にもよりかからずに生きようとすれば、もう貧乏十八番と笑うしかない状況です。
しかし、かがんで権威に屈し、上のご機嫌をうかがい、言いたくないことを言い、やりたくないことをやって安定した暮らしを求めるくらいなら、凛として自分の足で立って、自分の言葉で語り、貧乏十八番で暮したほうがいい、それで、いったい「なに不都合のことやある」、と思うのです。

わが家の暮らしは質素そのものですけれど、最初から不足と思わなければ何の不足もなく、不満と思わなければ不満もないわけで、四季折々の自然の風景を眺めながら、静かに微笑んでいられます。
『平家物語』の冒頭だの、旧約の『コヘレトの書』の言葉だのが頭に浮かんでくるのは、この世の栄華の虚しさを感じているからかもしれません。
私がよりかかるのは、まあ、せいぜい、中古屋で買った椅子くらいです。(伊藤)

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。