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質問に答えない首相 主権者は誰か

 一国の首相が、質問に答えない。野党議員や記者が鋭い質問を突き付けて、さあどう答えるかな、と思いながら聞いていると、質問の内容に答えずに持論を延々と述べる。さらに質問されても、質問を無視して持論を延々と述べる。何だ、あれは。わざとであれば大した能力だし、わざとでなければ何か疾患があるのかもしれない。どちらであれ、首相にふさわしい人ではない。話はまるで噛み合わない。議論、討論、対話といったものにならない。「水あめ首相」と呼ぶ人もいる。ほんとうに、水あめのようにつかみどころがない。

それに対し、国民の間から、「話を聞いているのか!」「答えになってないぞ!」「ちゃんと答えろ!」といった声があまり上がってこない。世論調査では、支持率が少し下がったとはいえ、まだ国民の約半数が彼を支持するという。尋常ではない。

議論になっていない答弁を、議論になっていないと指摘しない、非難しない。一般国民の読解力や対話能力が低下してしまったのか? それとも、気づいていても黙っているのか。沈黙は是認であり、主権者である国民に課せられた不断の努力の放棄とも言える。

中学・高校の教育で延々とやらされるのはドリルや問題集を使った反復学習であり、読書や思索、互いの議論に力を入れる教育がなされているとは思えない。部活動もスポーツが中心で、ある程度は音楽の活動もあるにせよ、どちらも他校との競い合いで、わが校は何々校に勝ったとか、何位に入ったとか、そんな話だ。大事なのは勝ち抜くことであり、思索したり話し合ったり、文章や美術作品で表現したりする文化活動は隅に追いやられている。

学校にいるときから、筋の通った発言より、スポーツで活躍している生徒の発言や、強い調子で言う生徒の発言が通ってしまう風潮がある。その延長での内閣支持なのか。

現政権が進めているのは、憲法の規定の一部停止であり、広義のクーデターの一種とも言える。これを是認してよいのか。日本国の主権者は日本国民ではなく、内閣総理大臣なのか。我々は首相に全権を委ねた覚えなどない。だのに、主権は乗っ取られてゆく。

私は、日本の未来を憂えている。

(伊藤一滴)

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