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「偶然に出来るはずはない」から進化論は間違っている?

一見科学的なスタイルで進化論を否定する言説がネット上にいくつもある。執筆者(動画の場合は話者)は、たぶんキリスト教原理主義者で、原理主義の立場から語っているのだろうが、宗教色を出さないようにして、まるで科学的な見解であるかのように進化論を否定する。

彼らには最初から答えがある。先入観なしに論じるのではなく、自分たちが思い込んでいる答えに至るように話を持って行く。

科学的に論じているかのように装い、宗教色を出さずに自分の宗教を語るのは、やり方として卑怯だ。宗教色を隠して接近してくる統一協会のようだ。

見分け方がある。

宗教を前提に語っている場合、たとえ科学を装っていても、「高度で複雑な生物が偶然に出来るはずはない」とか「偶然に出来るとは考えられない」といった言葉が出てくる。
何らかの意思が働いていると言いたいのだ。神という言葉を使わなくても「神の働きに違いない」と言いたいのだ。

「偶然に出来るはずはない」のような言い方は、科学ではない。
偶然かどうかは、その人の主観でしかない。科学を論ずる場に主観を持ち込むのは科学ではない。科学のふりをしたエセ科学である。

これまでの実験や観察の積み重ねで明らかになっていること、必ずそうなること、再現実験可能なことであれば、こうすればこうなるのは必然だと言える。でも、必然だと客観的に断定できないことにまで「偶然に出来るはずはない」などと言いだすのは、どんなに科学っぽく論じていても科学ではない。

「偶然に出来るはずはない」の他にも、

「確率的にあり得ない」、

「設計図なしにできるはずがない」、

といった言い方が出てきたりする。


「確率的にあり得ない」? 
たとえば、「我が家に隕石が落下するなんて確率的にありえない」って言えるんだろうか?(隕石が落ちるのも落ちないのも神様の予定? 神様が予定しているなら私たちが日々の安全を祈っても無意がない?)
どんなに確立が低くても、確率的にあり得ないように思えても、起きるときには起きる。起きないという客観的な証拠なしに確率からあり得ないと断ずるのはその人の先入観・思い込みでしかない。

「設計図なしにできるはずがない」?
適さないものが淘汰されれば適するものが残る。最初から適するものだけあったのではない。だから設計図はいらないと考えることができる。
どうしても設計図を想定するのなら、「生物の進化も神の設計図による」という主張も可能になる。進化論を認めたからといって神の存在を否定することにはならない。今日、主流派のプロテスタントも、カトリックも、進化論を認めた上で神の存在を信じている。

だいたい「進化を認めるか否か」と「イエスの教えに従うか否か」とは何の関係もない。

統計があるわけではないから私の主観だが(だから科学ではないが)、どうも、イエスの教えに従わない自称「クリスチャン」たちの中にムキになって進化論を否定する人が多いような気がする。
イエスの教えに従い隣人愛に徹する人たちは、進化論がどうだこうだと人に絡んできたりしない。イエスに忠実な人たちは、心の中で進化論を認めているかどうかに関わらず、信仰と科学は次元の違うものだと考えており、信仰と科学を混ぜこぜにしたりしない。進化論の是非を語ることに大きな労力を費やしたりしない。
「進化論は間違っています!」とムキになる人たちは、イエスの教えより自分たちの先入観を優先しているようだ。

私が出会った進化論否定論者は怖い人が多かった。ちょっとでも批判すると逆上し、怖い目で睨みつけられた。感情むき出しになって食ってかかってくる人もいた。まるでチンピラのようで、あれがクリスチャンなのかと呆れもした。

それでも「私たちは聖書を信じるので進化論を否定します」と言う人たちは正直で、まだましなほうだ。科学的に論じているかのように装い、宗教色を出さずに進化論を否定する「クリスチャン」たちはタチが悪い。

進化論について語る中で、「偶然に出来るはずはない」「確率的にあり得ない」「設計図なしにできるはずがない」その他これらに類する言葉が出てきたら、それは科学ではなく宗教、または宗教色を隠した宗教である。科学のふりをして自分の宗教的な思い込みを語っているだけである。

(伊藤一滴)

参照:進化論を否定する「クリスチャン」たち(再び)
http://yamazato.ic-blog.jp/home/2020/08/post-50a2.html


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