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防犯について思うこと

私たち一家は、戦後1件も犯罪がないという山里の集落に暮しているので、ふだん、「犯罪なんてどこの世界の話?」みたいな感覚になっていますが、全国的には様々な犯罪があり、子どもが被害者となる痛ましい事件も起きています。

息子たちが通う小学校でも、防犯講習がありました。
犯罪など皆無に等しい田舎暮らしとはいえ、防犯対策の必要性を否定するつもりなどありません。ただ、世間に流布している「凶悪犯罪が増加し、子どもが被害にあう犯罪も増えている」というイメージは正しくないので、そのことは、はっきりさせておく必要があろうかと思います。

警察庁その他のホームページで見たところ、凶悪犯罪の総数も年々減少していますし、子どもの犯罪被害件数も減っています。「増えている」というイメージは誤りで、マスコミのセンセーショナルな報道の影響や、特に都市部で孤立した親たちの不安感が、そうした誤ったイメージを増幅させているのではないかと思いました。
都会には、知らない人とは一切口をきくなとか、道を聞かれても無視しなさいとか、子どもに教えている親もいるそうですが、そこまで世の中が病んできたのかと思うと悲しいです。

「凶悪犯罪の増加」といった誤った先入観で不安におびえ、高価な防犯グッズを購入したり警備会社と契約したりする前に、きちんと挨拶をするとか、近所で声をかけ合うとか、危険や異常を感じたら逃げて、人に知らせるとか、そういったごく当たり前なことが大事だと思うのですが、「知らない人とは口をきかない」ような人が増えていくのでは、もう、難しいのでしょうか。

子どもは本来、危ない所に行きたがるんです。私も子どものころ「冒険」が大好きでした。防犯と、子どもが生きる力を身につけながら育つことと、はたして両立するのだろうかと、親として、悩んでしまうところです。(伊藤)

新米はおいしいのですが

自分で栽培した米をやっと少し精米し、新米をいただきました。おいしいです。
モミのままで保管してある分もだいぶあるので、モミ摺り後の厳密な重量を出せないのですが、約12俵かそれ以上になりそうです(1俵は60kg、12俵で720kg)。豊作です。
田んぼを使わせてもらった謝礼のお米(俗に言う「年貢米」)、私の父母と妻の父母に贈る分などを引いても、自家用の飯米は自給可能です。

新米は、香り、味、適度な粘り、歯ごたえ、どれをとっても絶品です。
手前味噌かもしれませんが、今まで食べたどんな米よりおいしいような気がします。
地主の真壁さんや近所の農家の人たちからいろいろ協力していただいたこと、妻に手伝ってもらいながら作業したことなど、思い出しながら食べました。
山間部の水田は、作業効率は悪くとも、水も土も質がよく、おいしいお米が採れるようです。
機械乾燥でさえこんなにおいしいのですから、天日干しにしたらどんなにおいしいか、ぜひやってみたいものです。

真壁さんは今年80歳。奥さんと2人暮らしの高齢世帯です。
去年まで稲作もりんご農園も続けてきたのですが、足を傷めて稲作をやめ、それでも、りんごだけは続けてきました。足に障害が残り、歩くのが困難で、りんご園を続けるのも難しくなったと本人は言います。子どもたちはそれぞれ独立して遠くで暮らし、後を継ぐ人もいません。こうしたケースは、地方の農村では、かなり多いのではないかと思います。
「伊藤さん、りんご、やってみないか」
と真壁さんはおっしゃるのですが、私は、今のところ、果樹をやるつもりはないです。
りんごなどの果樹は、農薬使用を当然の前提に短い年月で品種改良されてきたので、無農薬・低農薬での栽培が非常に難しいらしいです。「無農薬で育つ果樹は梅と柿ぐらいだ」と言われています。

農作業小屋の機械を借りてモミを摺り、終わってから小屋の掃除をしました。真壁さんは、1つ1つの農機具について、私に説明してくれました。
「来年は、おれ、もう出来ないかもしれないから。そのときは、伊藤さん、使ってくれ」
私は返事に困りました。親戚でも何でもなくて、たまたま田んぼの一部を使わせてもらっただけなのに。
戦前からずっと続いてきた農家が、廃業を覚悟する場に立ち会うことになってしまいました。

「地主さんが引退するときに、一式ゆずってもらえばいいんだよ」と言う人もいますが、生きてきた証としての農地や農具、農業に対する思いがあるわけで、人を利用してタダ乗りするようなことはしたくないです。
新米はおいしいのですが、私の気持ちは複雑です。(伊藤)

ようやく稲刈り

10月3日、雲1つない秋晴れの下、稲刈りをしました。
最初は4日の土曜日にする予定だったのですが、地主の真壁さんから、「4日から天気が崩れるかもしれないから、3日に稲刈りをしたほうがいい」と連絡があり、急きょ仕事の予定を変更して稲刈りをしました。(実際、真壁さんがおっしゃた通りの天気になりました。農家は、天気には敏感です。)

種モミの用意に始まり、苗をつくり、田植えして、今まで育ててきた稲が、見事に育って黄金色の海になり、いよいよ収穫かと思うと胸が高鳴りました。
実は、この実りの多くは自然の力です。あとは今まで田んぼの手入れをしてきた真壁さんの力で、私の力はわずかです。天の恵みと真壁さんには感謝です。

本当は天日干しがおいしいのでしょうが、今回は天日干しの準備が間に合わず、真壁さんにコンバインを出してもらい、収穫したモミは人工乾燥にかけました。コンバインというのは、稲刈り機と脱穀機とわら切りが合体した機械です。稲を刈りながら走行中に脱穀し、わらを刻んでばらまくというすごい機械です。

『新版・作物栽培の基礎』[農文協2004]によると、今はコンバイン刈り・人工乾燥が9割で、天日干しは1割だそうです。
少数派の道具は、だんだん入手が困難になります。まず、天日干し用の稲杭を売る店が少なくなりました。コンバインには脱穀機能もあり、コンバインを使えば脱穀機もいらないので、ハーベスター(自走式の脱穀機)の生産も減り、中古の脱穀機の入手も困難になりました。「伊藤さん、もっと早く言ってくれたら脱穀機なんかタダであげたのに。この春(あるいはこの夏)スクラップ屋にやっちゃったよ」と何人からも言われました。
今年は中国バブルで鉄材が高騰し、スクラップ屋が農村の隅々まで回ってきたようです。なにせ、くず鉄が1キロ60円を越えていたのですから。ちなみに、オリンピックの終了と共に鋼材バブルもはじけ、今、くず鉄はキロあたり20円かそれ以下だそうです。

昔は鎌で刈って天日干しをしたそうです。そのあと、稲刈り機が出てきて、さらにバインダーと呼ばれる結束機能付きの稲刈り機になりました。これは今も使われていて、私も中古品を1台入手しました。その後、コンバインという、稲刈り機と脱穀機とわら切りが合体した機械が主流になり、今に続いています。農家の人手不足や高齢化もあって、多少味が落ちても、手間の少ないコンバイン刈りが主流です。

1反(300坪)と少しの田んぼは、約2時間できれいに刈り終わりました。機械が入れない隅のほうは、昔ながらのノコギリ鎌で手刈りしました。手刈りの稲も、最後にコンバインに放り込みました。あたり一面、稲わらのいい香りがしました。
さて、いくらコンバインで刈って田んぼで袋づめしても、重い生米の袋を軽トラに積んで乾燥機まで運ぶのは人の仕事です。精米すれば600キロくらいになるのでしょうが、生のモミのままだと1トンを越えています。これを軽トラに積み、作業小屋に運んでから乾燥機に入れるのも人力。これは高齢者が多い農家にはかなりきつい仕事です。
真壁さんに機械を操作してもらい、私と妻とで生のモミを運んだのですが、2人とも、けっこう疲れました。真壁さんの作業小屋にあるモミ乾燥機は巨大で、使用最低量が生のモミ1トン。私たちが田んぼから運んだモミは、この最低量を少し超えていました。
そのあとは日程の都合がつかず、乾燥してもらったモミはまだ真壁さんちの小屋の中で、食べていません。早く食べたいのですが。

さて、稲杭と脱穀機を探してきて、来年こそは、天日干し、がんばるぞ。(伊藤)